【連載】蹴球百景vol.3「日豪戦は引き分けたけれど――。オーストラリアサッカーに感じたある変化」

2016年10月16日 宇都宮徹壱

オーストラリアで過剰なアウェー感を覚えない理由は……。

オーストラリア滞在中の一枚。サポーターの盛り上がりを感じた。写真:宇都宮徹壱(Melbourne, Austlaria 2016)

 世界のあちこちを旅していると、サッカーの試合に関係なく「アウェーを感じる」バロメータが働く。私の場合、(1)公用語が英語、(2)サッカーがナンバーワンスポーツでない、(3)異文化や外国人に対して不寛容、というのがアウェーを感じる3大要素だ。
 
 逆に治安が多少悪くて、どれほど辺鄙な国であっても、私の拙い英語が通用して、それなりにサッカーの話ができて、極東の島国から来た人間を受け入れてくれるのであれば、私は一定以上の安心感を覚えることができる。
 
 昨年のアジアカップ以来、1年半ぶりに訪れたオーストラリアは、(1)と(2)については残念ながらアウェー要素をたっぷり含んでいる。オーストラリアで話されるイングリッシュは、スピーディーな上にアクセントが独特でどうにも聞き取れない。加えてかの国では、ラグビーやクリケット、そしてオージーフットボールが人気スポーツ。サッカーについては、10年前に比べれば注目されるようになったものの、まだまだ「ナンバーワン」とは言い難い。
 
 それでも、オーストラリアという国に過剰なアウェー感を覚えないのは、(3)に関して常にオープンマインドであるからだ。もともとは大英帝国の流刑地であったが、第二次世界大戦の前後からギリシャや旧ユーゴスラビアといった東欧からの移民が増え、その後は東南アジアや中国や中東からの移民・難民を受け入れて今に至っている。
 
 今回、日豪戦が行なわれたメルボルンでも、サウスメルボルンFC(ギリシャ系)やメルボルン・ナイツFC(クロアチア系)といった移民系の名門クラブがあり、地域性を重視するAリーグには所属していないが、今も根強い人気を誇っている。
 

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