【10月シリーズ総括】豪州戦で露呈した“守り切れない、突き放せない”現実

2016年10月14日 広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

今のハリルジャパンは攻撃も守備も中途半端だ。

10月シリーズの2試合は、1勝1分の成績で勝点4を獲得。最低限の結果を得たハリルホジッチ監督だが、今後に向けてチームマネジメントには手を加えなければならないだろう。写真:佐藤 明(サッカーダイジェスト写真部)

 1-1で引き分けに終わったオーストラリア戦は、"超"がつくほど守備的に戦った結果だった。
 
 自陣でしっかりとブロックを組んで、相手を迎え撃ち、カウンターに活路を見出す。能動的ではなく、受け身のディフェンス。トップ下の位置で精力的に相手のボールを追いかけた香川真司は、「積極的な守備という意味で、どこから限定させて、連動してチームが前に行けるかという点で、今日はたぶん、前線からプレスに行ったシーンは本当に数えるぐらいだと思います」と振り返る。
 
 確実につなぎながら時間を作るような場面も少なかった。ポゼッションに頼らず、奪ったボールはなるべく速く縦に運んで、ゴールを狙う。
 
 かつてはロングボールを多用していたが、ここ最近はパスワークを軸に組み立てようとするオーストラリアとは、実に対照的だった。
 
 日本にもポゼッションに重きを置く時代があった。14年のブラジル・ワールドカップを戦ったザックジャパンだ。しかし、ブラジルの地では1分2敗の成績でグループリーグ敗退。本田圭佑や岡崎慎司、香川、長友佑都ら北京五輪世代が選手として一番良い時期に、日本は世界の舞台で打ちのめされた。
 
 その苦い経験を経て、ではどうすればいいかと考えを巡らす"当事者"の岡崎は、次のように語る。
 
「自分たちで(ボールを)回して、結果、それでワールドカップでは勝てなかった。今はそこから脱皮するじゃないけど、成長するためにも、臨機応変さは必要だとして、そういう戦いが求められる時に勝てば、自信になる」
 
 要は、ポゼッションへのこだわりを捨てて、リアリズムに徹するということである。主導権を握れないのなら、それを受け入れて、守備的に戦うことも厭わない、と。
 
 ワールドカップという舞台を想定するならば、日本がペースを握る時間帯はおそらく限られている。弱者としての立場を受け入れたうえで、いかに戦っていくべきなのか。
 
 その意味では、ともすれば相手をリスペクトし過ぎていたとも言えるオーストラリア戦は、ひとつの試金石になるとも言える。現在地を図るうえでは、恰好のモデルケースとなった。
 
 そこで導かれた現実は、今のハリルジャパンは攻撃も守備も中途半端だということだ。オーストラリアから先制点を奪う力はあるが、それを守り切ることもできなければ、相手を突き放すこともできない。
 
 90分を通したゲーム運びに課題があるのは明らか。戦術面やキャスティングを今一度、見直して、修正を施さなければロシア行きは厳しくなるだろう。
 
取材・文:広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)

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