U-16日本はなぜイラクに勝てなかったのか? 森山監督「日本では『そこなの?』と思われるけど…」

2016年10月03日 安藤隆人

代表決定戦より日本戦で勝った時のほうがイラクは優勝したかのように喜んでいた。

来年インドで開催されるU-17ワールドカップの出場権を獲得したU-16日本代表。森山監督は、厳しい環境下で戦い抜いた選手たちを讃える一方で、イラク戦の敗因についても語っている。(C) J.LEAGUE PHOTOS

 U-16日本代表のアジアの戦いは準決勝で幕を閉じた。グループリーグ3試合を21得点・0失点。U-17ワールドカップ出場権の懸かった準々決勝ではUAEを1-0で下し、世界への切符を手にした。
 
 準決勝ではイラクに今大会初失点を含む、大量4失点を浴び、2−4の敗戦。アジアチャンピオンという目標は達成出来なかったが、もう1年、チームとしての活動を伸ばすことが出来た。
 
「(チーム立ち上げから)1年半で準備をして来て、準々決勝の1試合ですべてが決まってしまうという緊張感は、その場に居ないと感じることが出来ない、非常にピリピリしたもの。その緊張感の中で、1-0でいつ決められてもおかしくないようなゲームを、選手全員の力で乗り切ったことは、選手たちにとって大きな財産になったと思います」
 
 帰国後、森山佳郎監督はまず大きなプレッシャーをはね除けて、世界のキップを掴み取ってみせた選手たちを讃えた。そして、同時に持ち帰った課題についても言及した。
 
「イラクの選手たちは代表決定戦で勝った時より、日本に勝った時の方が、優勝したかのように喜んでいた。それだけあの一戦に懸けていた。死に物狂いで来たと思う。そのメンタルのタフさ、本当の勝利への執着心はまだ遠く及ばない。技術的ではなく、メンタル的なことを言うと、どうしても日本では『え? そこなの?』と思われちゃう部分があるけど、インドに行ったメンバーはそれを身に染みて感じて帰って来た」(森山監督)
 
 戦うことの重要性。森山監督は、それを約1年半かけて、『これでもか』というほど選手たちに説き、浸透させて来た。もちろん選手たちも強烈な自覚として持っていた。だが、まだ意識していた「つもり」だった。
 
「イラクは球際が激しいのに、僕らはそれが出来なかった。優勝に向けてモチベーションを上げていた『つもり』だったが、そうではなかった。正直、モチベーションの上げ方が難しいと感じたし、明らかにイラクの方が、気持ちが上だった」(MF福岡慎平)
 
 本物の戦う意識は、もっと先にあった。森山監督の言葉は、自分たちが思っていた以上に深く、かつ心の底まで届いていなかった。それをイラクはピッチ上で自分たちに教えてくれた。もしこのまますんなりと優勝していたら、『つもり』のままで日本に帰って来ていたかもしれない。

次ページU-17ワールドカップに向けて対象年齢の幅が広がり、さらに競争が激化。

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