【FC東京×浦和】「ピッチでは言葉をかわさず」。アテネ五輪世代の“大ベテラン”が演じた静かに熱い“魂のバトル”

2016年09月20日 塚越 始(サッカーダイジェスト)

Jを静かに熱く牽引してきた那須大亮と前田遼一。ハイテンションなマッチアップで、スタンドにも届きそうなほど眩しい火花を散らし合う。

FC東京対浦和戦、前田(左)と那須が渾身のマッチアップを展開し、観る者を魅了した。写真:田中研治

[J1 2ndステージ・12 節]
FC東京×浦和レッズ
2016年9月17日/味の素スタジアム
 
 「話をしたのは試合前だけ。ピッチに立っている間は、お互い言葉をかわすことは、まったくなかったです」
 
 浦和のリベロに入った那須大亮がFC東京戦の90分間、ほぼマンツーマンでマークについたのがセンターフォワードの前田遼一だった。ともにアテネ五輪世代にあたる1981年生まれ。
 
 しかも前田が10月9日、那須が10月10日生まれというわずか1日違い。年代別の日本代表で常にチームメイトだったほか、2009年から11年までは磐田で一緒にプレーしている。互いの良さも弱点も知り尽くす"戦友"と言える間柄だ。
 
 なにより、ポジションは異なるものの、一つひとつのプレーに魂を込めて闘うスタンスが共通する。その姿勢を貫くことで、Jを静かに熱く牽引してきた。
 
 この日のふたりのバトルもまた、静かに熱く燃え盛り、スタンドにも届きそうなほど眩しい火花を散らし合った。敵視し合う両チームのサポーターも、このふたりのハイテンションなマッチアップのたびに息を呑み、前田と那須の背中を押す声援を送っていた。
 
 森重真人や梶山陽平の精度の高いハイボールが、前田をターゲットに放たれる。そのボールに対し、前田はトラップするか、後方や横にそらすか、一旦下げるか……どんな形であれ先にタッチしようとする。一方の那須は起点を作らせまいと、身体を投げ打ってでも、その先にボールに触れようとする。もちろん、そこからこぼれたセカンドボールもまた、どちらのチームが拾うかどうかで、戦局が大きく変わることは、両者とも重々承知していた。
 
 FC東京の攻撃のキーマンと浦和の最終ラインを司る要による攻防。勝敗を大きく左右する対決は、常に尋常ではない緊張感が漲っていた。
 
 試合後、那須は前田との対決について、「とにかく、きつかったです(笑)」と振り返り、次のように続けた。
 

次ページ那須は言った。「とにかく必死だったし、きつかった」。

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