ブンデスの“嫌われクラブ”ライプツィヒから見習うべきものとは!?

2016年09月17日 中野吉之伴

危険なのはライプツィヒではなく、相手の過激なサポーター。

あらゆる手を尽くしてチームを強化するクラブ(親会社)、ピッチ上で正当に結果を出し続ける現場、純粋に自分のチームを応援するサポーター……。ライプツィヒというチームには、様々な顔が存在する。 (C) Getty Images

 先週末の話だが、ブンデスリーガ・第2節最大の驚きは、優勝候補の一角であるドルトムントが昇格クラブのRBライプツィヒに足元をすくわれたことだろう。
 
 ドルトムント自身のプレー内容が芳しくなかった点を差し引いても、クラブとしてまだまだ発展途上のライプツィヒが、戦力・経験で大きな差がある相手に勝利したことは特筆に値する。
 
 ライプツィヒのSDラルフ・ラングニックは「確かに我々はアウトサイダーの立場だろう。だが、トップパフォーマンスを出し切れば、勝つこともできる」と試合前に口にしていたが、まさに全ての要素がうまく絡み合って歴史的な勝利を挙げることができた。
 
 この試合では、ホームスタジアムに詰めかけたライプツィヒ・サポーターの応援スタイルも注目を受けた。
 
 世界的大企業「レッドブル」グループのサポートを受けて一気に1部リーグまで駆け上がってきたライプツィヒだが、なりふり構わぬ投資で選手を補強するやり方に、他クラブファンからは「金満クラブ」と揶揄されてきた。
 
 DFBカップ1回戦では、対戦相手ドレスデンの熱狂的なゴール裏サポーターから、牛の生首が投げ入れられるという一幕もあり、過激さがエスカレートしないかと、心配の声も方々から挙がっていたぐらいだ。
 
 世間的にあまり良いイメージのなかったライプツィヒだが、この試合を観戦したDFBのSD、ハンシィ・フリックは『ビルト』紙のインタビューに対し、以下のようにホームチームのサポーターを絶賛した。
 
「スタジアムの雰囲気は、すごく気に入ったよ。90分間、ファンはチームをサポートし続け、対戦相手を罵ったりしなかった。ここでは、ファンのブンデスリーガに対する喜びを感じられる」
 
 また、ライプツィヒ警察のイェエル・ラデックは、こう語る。
 
「ライプツィヒには、カテゴリーB(暴力におよびそう)やカテゴリーC(暴力欲がある)に属するファンはいない。問題になるのはアウェー席だけだ。それに、相手クラブがライプツィヒを良く思っていないことから、アウェー戦ではリスクもある」
 
 そうした雰囲気の一因は、スタジアムを訪れるファンの構成にも表われている。平均で14歳以下が全体の10パーセント、女性率も30パーセント近くになるという。
 
 こうした模範的なファンの在り方にラングニックも、「我々のファンは、今後もライプツィヒの応援はスペシャルだということを示し続けるべきだ。うちのファンが相手を侮辱したのを、一度も体験したことがないんだ」と大きな喜びを感じている。
 
 過激さこそが欧州っぽさ、というイメージがあるかもしれない。時には叱咤激励する厳しさも必要だろう。ライプツィヒには、まだそこまで気持ちを入れ込んで応援しているファンが多くはないという背景もあるはずだ。
 
 だが、過激さばかりが選手へのサポートとなるわけではない。特にここ最近、ドイツのスタジアムでは、熱狂的なファンによる過激で危険な行ないが問題となっていただけに、純粋に自分たちのチームを応援し続けるというスタイルは、非常に新鮮で、価値のあるものだろう。
 
文:中野 吉之伴
 
【著者プロフィール】
なかの・きちのすけ/ドイツ・フライブルク在住の指導者。09年にドイツ・サッカー連盟公認のA級コーチングライセンス(UEFAのAレベルに相当)を取得。SCフライブルクでの実地研修を経て、現在はFCアウゲンのU-19(U-19の国内リーグ3部)でヘッドコーチを務める。77年7月27日生まれ、秋田県出身。
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