「アンフィールドとセント・ジェームズ・パークは別格だった」10月に現場復帰のラファエル・ベニテスが語る“プレミアリーグの記憶”【現地発】

2025年11月20日 ワールドサッカーダイジェスト編集部

印象深いのはチェルシー。CLで戦ってから一気に…

プレミア時代の記憶を語ったベニテス。今年10月にパナシナイコスの監督に就任した。(C)Getty Images

 あの「イスタンブールの奇跡」など、監督としてリバプールに数々のタイトルをもたらしたラファエル・ベニテス。プレミアリーグ史上初のスペイン人指揮官として道を切り拓き、今年10月にはパナシナイコスの監督として現場復帰を果たした名将が、自身の記憶を呼び起こし、異国での挑戦の秘話や教え子との思い出を語る。
 

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 プレミアリーグには素晴らしい思い出がたくさんある。リバプールと契約を結んだときのことは、いまでも鮮明に覚えているよ。イングランドは雨が多く、気候に恵まれているバレンシアとはそれこそ別世界のようだった。私は新天地に行く前にはその国や街の文化や歴史、クラブについてファンや選手についてなど、あらゆることを予習していく。もちろん新しい環境にスムーズに適応するためだ。イングランドを良く知る友人に話を訊いたり、英語力のアップのためにビートルズの曲を聴いたりもした。決して簡単ではなかったが、新たな挑戦への楽しみのほうが大きかった。

 当時のプレミアは、常勝軍団のマンチェスター・ユナイテッドに対し、圧倒的な資金力で大型補強を敢行し、急速に力をつけてきたチェルシーと、毎年安定してトップ3に入っていたアーセナルが挑み、覇権を争っていた。この3チームのなかで、対戦相手として最も印象深いのがチェルシーだ。2004-05シーズンのチャンピオンズリーグ(CL)準決勝で彼らに勝って、それから一気にライバル関係が燃え上がり、アンフィールドとスタンフォード・ブリッジで何度も熱戦を繰り広げた。
 
 私はリバプールを率いた6年間で、4つのタイトルを獲得した。皆さんは大逆転でミランを下した04-05シーズンのCLを真っ先に思い浮かべるだろうが、他にも思い出はたくさんある。ウェストハムとの決勝戦で試合終了間際に同点に追いつき、PK戦を制して手にしたFAカップ(06-07シーズン)は格別だった。他にもCLのオリンピアコス戦(04-05シーズンのグループステージ)でスティーブン・ジェラードが決めたスーパーミドルや、ベシクタシュ戦(07-08シーズンのグループステージ)での8-0の勝利など、挙げたらそれこそキリがない。

 そうしたエピソードとともに私の心の中で輝き続けているのが、スタジアムの雰囲気だ。なかでもアンフィールドとセント・ジェームズ・パークは別格だった。敵将として乗り込んだときに、改めてその凄さを感じたよ。ホームチームの監督として声援を受けているときは最高の後押しだったが、敵となるとこれほどプレッシャーのかかるスタジアムはない。

 どのクラブのファンも、自分たちの本拠地が一番だという自負を持っている。だからこそ、プレミアのスタジアムには独特の雰囲気があるのだろう。
 

 ファンの目も肥えていて、結果だけでなく、努力の過程やクラブへの献身も評価する。人生を懸けてフットボールに取り組む、高いプロ意識を持った選手が人気を集めるのはだからなんだ。個人的には、リバプール時代にクラブが経営破綻寸前の状況に陥ったとき、矢面に立って戦い続けたことを、退団から15年経ったいまでもファンから感謝されることに驚かされる。

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