【リオ五輪】中村、大久保、風間監督が見た大島僚太の出来。「あれが普通」「驚きはない」「ミケルは分かってる」

2016年08月12日 いしかわ ごう

「周りには100キロのスピードに見えているが、僚太には60キロにしか見えていない」(風間監督)

スウェーデン戦で1アシストをマークした大島。あのプレーは彼の真骨頂だった。写真:JMPA/小倉直樹

 グループリーグ3戦を通じて、ピッチ上で際立った存在感を見せ続けたのは大島僚太だった。技術の正確性とスピードから成る、高次元のパフォーマンスは別格。味方と敵がひしめく密集地帯でも巧みなルーレットで相手をかわしてボールに展開するなど、時に余裕すら漂うプレーぶりは「圧巻」という言葉がふさわしい出来だった。
 
 そんな彼のパフォーマンスに対して、風間八宏監督は「あれが普通のこと」と話す。
 
「周りには100キロのスピードに見えているかもしれないけど、僚太には60キロのスピードにしか見えていない。止める、蹴るの技術もそうだし、目の速さもそう。そういう意味で、僚太は日本人でもやれることを示したんじゃないかな」
 
 風間監督のよく言う「スピード」というのは、「目の速さ」や「判断の速さ」などの要素を組み合わせたものでもある。例えば、他の選手が3秒の間で3つのプレー選択肢が見えていたとしたら、大島はそれを1秒で見つけることができる。判断力と技術の正確性のある大島は、そこでプレーのスピードを0.5秒速めたとしても、ミスを起こすことはない。だから、風間監督からすれば、あれは大島にとっては平常運転だったというわけだ。
 
 なお「帰ってきたら、まずは看板の跳び越え方を教えないとな(笑)」と律儀にオチをつけていたのはさすがである。
 
 一方、川崎フロンターレの同僚たちはどう見ていたのだろうか。
 
 例えば、主将の中村憲剛。彼も「自分からすると、それほど驚きはなかったかな」と話している。チームでやっていることを、大島がそのまま表現できていたという印象があったからだろう。「僚太は普通にやれていました。今一緒にプレーしている者とすれば、それが嬉しかったかな」と言う。
 
「普通にやれている」という大島の姿から中村があらためて感じたのは、トラップの重要性だという。鋭く寄せに来た瞬間に、相手の逆をつくトラップ一つで相手を外し、面白いように局面を打開していたからである。
 
「僚太だけちゃんとトラップしていましたよね。たったそれだけのことだけど、それで劇的に状況が変わっていた。もちろんJリーグでは、僚太はあんなに前を向かせてくれないし、あれだけフリーになることもないけど。ナイジェリア戦だけ、途中でミケルが僚太を気にしだしたぐらい。やっぱりミケルはわかっているよね(笑)。ノープレッシャーならば、僚太一人でもあれだけ決定機を作れるということ」
 
 そのプレーぶりを通じて、フロンターレで磨いている技術が五輪という舞台でも通じていたことが、チームの自信にもつながると話している。
 
「僚太があのレベルでも臆せずにやれるのを見て、フロンターレでやっていることを突き詰めていけば、世界に通じると思った選手もいるんじゃないかな。そう思えば、ここでの練習もより意識を高くやれますよね」

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