「ここにも敦樹!」「あそこにも敦樹!」ベルギー中堅の好クラブで“日本の大型ボランチ”に覚醒の予感。「自分が中心になってやっていきたい」【現地発】

2025年09月17日 中田徹

「手応えを感じてます。監督からの信頼も得られている」

力強くヘントを牽引する伊藤。欧州2年目、飛躍の時を迎えた。写真:Belga Image/アフロ

 7月19日、フェイエノールトとの練習試合を終えた後、伊藤敦樹(ヘント)は言った。

「今日の試合を見るとわかると思いますが、今年の監督(イバン・レコ)は規律正しくやるタイプなので、みんなサボらないですし、ハードワークしますし、楽しみにしてもらっていいと思います」

 その言葉に偽りはなかった。9月14日、アントワープとのアウェーゲーム。ヘントは開始14分でDFコットが退場したうえ、36分にビハインドを負う苦しい展開ながら、2-1で粘りの勝利。全員、よく耐え、勝ち切った。

 伊藤の豊富な運動量と当たりの強さが、数的不利の試合で映えた。47分にヘントが勝ち越すまで、伊藤は中盤の底から前に飛び出し、左右に流れ、「ここにも敦樹!」「あそこにも敦樹!」とピッチを縦横無尽に駆け巡ってボールを散らしたり、ボールホルダーを潰しにいった。その後は最終ラインの前でしっかり守備を固めながら、時おり長駆ランニングで敵陣まで侵入し、味方に一服入れる時間を作ったりした。

 伊藤とボランチで好コンビを組むマティアス・デロージュにとっては、味方が退場した割を食って早々にベンチに退く、気の毒な1日だった。一方、伊藤にとって、それはレコ監督からの信頼の証。まだ開幕7試合に過ぎぬとは言え、ここまで伊藤は全試合フル出場を継続している。

「今シーズン、今のところフルに出続けているので手応えを感じてます。監督からの信頼も得られていると思っているので、その期待に応えられるように結果に直結するようなプレーを継続して増やしていきたい」

 伊藤に対する指揮官の信頼を象徴するのが28分。プレーが一瞬、途切れたときにレコ監督は伊藤をベンチに呼び寄せ、"ヘントがポゼッションしている時は、味方MFと2ボランチの形を作って前に蹴るだけにならないよう、ボールを集めながら保持していくこと"。"アントワープボールの時は、伊藤が真ん中でしっかり止まって、ゾーンで守ること"を指示。伊藤はコクリと頷いてポジションに戻り、タスクを敢行し切った。
 
 元オランダ代表の巨漢ストライカー、ビンセント・ヤンセンはここ2年ほど、アントワープでトップ下、シャドーストライカーのポジションを務めることが多い。劣勢のヘント戦の後半半ばになると、より中盤のように振る舞ったり、左に流れたりした。こうした経緯から、伊藤とヤンセンが直接バトルすることもあった。

「ファウルで止めようとしたんですけれど、強かったですね。ファウルすらできませんでした。ああいった選手がこっちには山ほどいるので、彼らからボールを奪い切れる力強さをもっともっと付けていけば、さらに上のステージに自分も行けると思います。でもチームとしてはヤンセンが左サイドや真ん中に降りてきてくれて、守りやすくなりました」

 前節までヘントは16チーム中15位と成績が振るわなかったが、決して試合内容は悪くなかった。

「引き分けに終わった前節のクラブ・ブルージュ戦も、去年よりチームとしても個人としてもやれた感覚がありました。国際マッチブレイクの時にシャルルロワとの練習試合があったんですが、そこでもかなり手応えのある試合ができて、その流れで今、継続してやれてます。今は移籍ウインドウが閉まり、本当にいい選手(DFファン・デル・ハイデン、MFカドリ、スコラス、FWカンガ)が来てくれてメンバーが固まった。手応えを感じながら試合ができてます」

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