「何も挑戦せずして負けた感がある」強豪PSV戦で21歳日本代表が垣間みせた“考える男の影響力”。「CB起用? 経験としては良かった」【現地発】

2025年09月14日 中田徹

モロッコの英雄と丁々発止のマッチアップを展開

PSV戦で複数ポジションをこなすなどフル稼働した佐野。チームは3ー5の敗北を喫した。(C)Getty Images

 9月13日、NECはPSV相手に3-5の劣勢でアディショナルタイムを戦っていた。ファンももう敗北を受け入れざるを得ない状況だ。

 すると彼らは応援することを1分間止めて、ピッチの上で戦うイレブンを労うかのように拍手しはじめた。ビッグクラブのPSV相手に真っ向勝負を挑み、華やかなゴールの祭典を演じたNECの戦いぶりに観客は酔った。MFとして先発し、最後は3CBシステムの右にポジションを移した佐野航大は、負けても拍手喝采を受けたことにこう感想を漏らした。

「そこが面白いところですよね。『3強(PSV、アヤックス、フェイエノールト)相手にどれだけやれるか?』というところ(をNECのファンは見に来る)。でも選手の側からすると勝ってないので、ありがたいですけれど、『勝つためにもっとできたのでは』とずっと思ってます」
 
 この夜、佐野が対峙したのはイスマエル・サイバリ。9月5日のワールドカップ・アフリカ予選でニジェール相手に2ゴールを挙げて、モロッコの5-0の勝利に貢献したばかりでなく、同国を本大会出場に導いた立役者だ。

「いい選手でした。(チームからの指示は)サイバリが裏を狙って出てくるので、そこの対応を自分がしっかり対応するようにすること。そこはしっかりやったんですが、彼はファイナルサードの動きがうまいし、ボールを持たすとやっぱりいいプレーをする。全部やられたという感じはしないんですけれど、守備だけではなく、俺がボールを受けたときにもっとサイバリとやりたかったです」

 ボールを持ったサイバリを防ぐ佐野、NECの隙を突こうと走るサイバリを追う佐野――。両者のマッチアップの構図はそんな感じだった。ボリュームのあるフィジカルを誇るサイバリと、いかに佐野はデュエルに挑んだのか。

「サイバリは身体がゴツいので、当たらないように対応しました。あと、速い。『今!』というときの"ゼロから100"のスプリントが速いんです。タラタラしたようなポジショニングを取っているように見えるんですが、彼は(『今!』というタイミングを)ずっと狙って待っているので、90分間ずっと集中してプレーしないといけない。日本ではできないような経験でした」

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