「だからこそ彼を獲得したんだ」新天地でいきなり躍動した日本代表CBに指揮官ファン・ペルシも大満足!「最終ラインのパズルが悩ましい」【現地発】

2025年08月04日 中田徹

さっそく守備陣を統率し、上田のゴールもお膳立て

ヴォルフスブルク戦で出色の出来を披露した渡辺。緊急事態に陥るフェイエノールト守備陣の救世主となれるか。(C)Getty Images

 フェイエノールトに移籍したばかりのCB渡辺剛が8月2日、ヴォルフスブルク(ドイツ)との親善試合に出場し62分間プレー。上田綺世のゴールをアシストするなど、早くもチームに馴染んだところを見せた。観客の体調不良で80分ほどで終了したこのゲーム。フェイエノールトは4-0の快勝を収め、上田は2ゴールを挙げた。

 渡辺がフェイエノールトに移籍したのは7月23日のこと。ドイツ合宿でチームに合流してから1週間余りしか経ってない。それでも渡辺は身振り手振りと声で最終ラインを統率。18歳のMFタイス・クラーイエフェルトがCBに抜擢されて渡辺と好コンビを組み、昨季ブンデスリーガ11位のチームを完封した。

 ロビン・ファン・ペルシ監督が目ざすのはハイプレスとポゼッションを掛け合わせた攻撃サッカー。そのため、渡辺とクラーイエフェルトは敵陣に入って3分の1のところで最終ラインを作るシーンが多かった。守備にとってはかなりリスキーなサッカーだが、ふたりとも前で潰しに行くタイミングが良く、背後へ蹴られたときのケアも行き届き、ほとんど危なげなかった。

 とくに渡辺はグラウンダー気味のクロスのインターセプト、至近距離でのシュートブロックが冴えた。またクラーイエフェルトが一度、ボール処理を誤ってピンチを招きそうになったときの、渡辺の落ち着いたリカバリーも光った。

 以前、ヘント時代の指揮官であるハイン・ファンハーゼブルックから「渡辺の守備はベルギー屈指だが、ヘントのようなボールを握って試合を支配するチームではもっとボール保持時のプレーを改善しないといけない」と指摘された渡辺だが、その課題はヘントでの2年間で解消済み。ヴォルフスブルク戦では縦へのビルドアップのパスや、対角に立つ右ウインガーへのサイドチェンジのパスで、あらためてボール保持時のプレー向上を証明しただけでなく、49分には見事なスルーパスを通し、上田のゴールをアシストした。得点者の上田がゴール前で祝福を受けるのと同時に、ハーフライン近くてガッツポーズした渡辺の元にもチームメイトが集まってきた。
 
 ヴォルフスブルク戦での渡辺のパフォーマンスにファン・ペルシ監督は満足げだ。

「渡辺は瞬く間にチームに順応した。彼は長いこと高いレベルでプレーしたうえ、とてもたくさんの試合に出場し続けた経験豊富な選手。だからこそフェイエノールトは彼を獲得したのです。CBとして右でも左でもプレーできるのも、チームにとってありがたい」

 ボール保持時のプレーはどうだったか?

「ボール保持のときのプレーも、渡辺は素晴らしかった。彼のレベルは本当に高い。しかし何より、無失点で終えたことが良かった」

 そう言ってファン・ペルシ監督は私の肩を叩き、記者室を出ていった。

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