「日本サッカーの成長には理由がある。根拠のある成長です」韓国レジェンドが正直に明かした隣国ライバルへの“ポジティブ評価”。「体系的に発展していますよ」【現地取材】

2025年08月03日 石田英恒

元韓国代表DF、李榮杓インタビュー[第3回]

ロングインタビューで日本サッカーへの率直な想いを語ってくれたイ・ヨンピョ氏。指導者の道に進まなかった理由も明かしてくれた。写真:石田英恒

 現在、KBS(韓国の公共放送局)のサッカー解説者を務める李榮杓(イ・ヨンピョ)氏。選手時代の過去の華々しい実績から見れば、指導者の道を歩んでいてもおかしくはないが、現役引退後は、江原FCの運営、大韓サッカー協会での仕事をこなすなど、サッカーの組織、運営面での勉強、仕事をし、裏方からサッカーを支える職務に従事してきた。今回は、現在の仕事と今後の目標などについて聞く。[インタビュー第3回/全3回]

――日本サッカー界は組織、運営面に力を入れ、さらなる進化を遂げました。その点についてどのように見ていますか?

李榮杓「私たちが日本のサッカーを見たとき、とてもポジティブに評価できる点があります。日本の選手たちがこのように持続的な成長をし、一人ひとりの選手がサッカーの技術を向上させることができたのは、それに合った良い組織、環境などが提供されていたからだと思います。

 日本のサッカー環境、インフラ、組織、運営面のいずれもが同時に成長していると感じます。そして、そういうものが実際に選手のプレーの成長、プレーの向上に好影響を与えている。そういう意味では、日本サッカーはかなり体系的に発展しているのではないでしょうか。

 ひとつの国のサッカーで見れば、偶然に一時的に『黄金世代』が出てきてチーム力が向上することがあります。ただそういう現象は一時的なものです。日本の成長はそうではない。理由がある成長、根拠のある成長です。とてもポジティブなものだと感じています。一時的に良くなるのではなく、継続的に良くなる、その理由と根拠が分かるという点で、日本のサッカーがしっかり成長してきているという印象を受けます」
 
――現在はテレビで解説者をされていますが、今後は、どのような活動をされていきますか? また、将来に目標とされていることがあれば教えてください。

李榮杓「通常、選手は引退したら指導者になることが多いです。実績を積み重ねてきた選手が自身の経験を直接、後輩たちに伝えることができ、選手にとって最良の選択のひとつと言えるでしょう。

 引退した選手たちが、自分の経験やノウハウを後輩に伝える指導者として活動するのはとても素晴らしいことです。が、私が欧州で見たのは、裏方としてチームの組織や運営を支える仕事の選択があり、そういう道を選ぶ選手も一定数はいるということでした。チームの組織、運営面が発展することでチームがより進化し、サッカーやスポーツがより発展していくという流れを知りました。

 そこで、私は指導者として韓国サッカーの発展を助けるよりも、チームの組織、運営面を通じて韓国サッカーが発展できるようにサポートしたいと思うようになりました。だからこそ、スポーツマーケティングや経営学を学ぶためにMLS(メジャーリーグサッカー、バンクーバーホワイトキャップス)で引退した訳です。

 引退後、私は大韓協会でも働き、クラブ(江原FC)の代表としても勤務しました。江原FCを退団後は、KBSでサッカー解説の仕事をしています。江原FC退団後にも、大韓協会からオファーを受けましたが、そのときはもうKBSと契約を結んでいました。契約期間があるため、大韓協会の提案に応じることはできませんでした。今後も機会があればチームの組織運営の仕事は続けていくつもりです」

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