最大の悩みとチャーター機の恩恵...スタッフが語る川崎のACLエリート準優勝の裏側

2025年08月01日 本田健介(サッカーダイジェスト)

縁起が悪いかもしれないが...

様々な話をしてくれた清水氏。ACLを何度も経験してきた貴重な人物だ。(C)SOCCER DIGEST

 ACLエリート(ACLE)として姿を変えたアジア王者を争う大会で準優勝した川崎。その戦いの舞台裏を、清水泰博チームダイレクターに改めて振り返ってもらうインタビューの第2弾だ(第2回/全3回/本文内敬称略)。

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 当時大きく取り上げられたJリーグがサウジアラビアで集中開催された準々決勝以降の戦いへ川崎と横浜をサポートしようと準備したチャーター機。その恩恵は大きかったと清水も語る。

「かなり大きかったですよ。選手の身体、精神的な負担も軽減できましたからね。さらに理想通りの荷物を運ぶことができた。個数で言えば、全部で200個くらいだったんですかね。飛行機に載せたい荷物のリストも事前に提出させてもらったのですが、当日に急遽持っていっても対応してもらえましたから。超過料金を支払いながら運んでいたこれまでとは大きな差でした。現地でも調達しましたが、食材の面でも助かりましたし、スポンサーさんのツアーやサポーターの方のツアーに対応する事業スタッフの荷物も必要な分は載せることもできました」

 こうして決戦の舞台へ飛び立ったチームは、清水が用意していたホテルで万全の準備を進め、準々決勝でカタールのアル・サッドを延長戦の末に3-2で破ってみせた。中2日と過酷なスケジュールでチームは次戦はクリスティアーノ・ロナウドらを擁するアル・ナスルとの対戦、その先の決勝へ燃えていた。一方で清水は選手らを誇らしく見つめながら、大きな悩みも抱えていた。
「大会中、何が大変だったかと言うと、終わりを考えること。行きはチャーター機を用意していただけて大変助かりましたが、日本へ帰る飛行機を取るのが実は一番大変なんです。チームには勝ち上がって欲しい。でも国内に戻ってからのリーグ戦のことなどを考えると、敗退のことも考えて、選手の負担が少ないように、体制を整えておかないといけない。

 飛行機のチケットは一度は取り直すことが可能だったので、ここでもマリノスと情報を交換しながら、チケットの交換はできないですが、どちらかがキャンセルするタイミングが分かれば、そこで取り直したりだとか、対応できるように準備していました。

 準々決勝の日も準決勝の日も朝から、縁起が悪いかもしれませんが、必要なことなので勝った場合と負けた場合のシチュエーションを旅行会社の方と想定していました。状況は刻一刻と変わり、時間をかけるほど選択肢は狭まっていくわけですからね。勝ち上がれば日本から多くのサポーターの方が来てくださるので、その分、帰りのチケットを求める人も増えるでしょうし、当然ながら僕らの依頼をもとにたくさんの方に動いていただくことになるわけですから。だから結果を見てすぐ対応できるようにしていました。

 本音を言うと、『試合が終わってからで良いじゃん』『試合に集中させてよ』とも思いますよ(笑)。でもチームのことを考えればそうはいかない。ACLで悔いなく戦ってもらい、その後のリーグ戦にも全力で臨んでもらう環境を整えることが僕らの仕事ですから」

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