「お前じゃ無理」のひと言に奮起。「うっせぇな」と鈴木優磨が意地の一発!

2016年07月14日 広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

試合後、西は「な、言っただろ」と鈴木を労う。

ガムシャラにピッチを走り回り、終了間際の87分にようやくゴールを決めた鈴木。「最後まで使ってくれた石井(正忠)監督に感謝したい」。(C)J.LEAGUE PHOTOS

[J1・第2ステージ3節]鹿島アントラーズ 3-0 名古屋グランパス
7月13日/県立カシマサッカースタジアム

 その言葉に、燃えないわけがなかった。
 
「お前、今日は点取れないよ。お前じゃ無理だから」

 試合前、西大伍から言われた。

 鼻っ柱の強い20歳のアタッカーは、むしろ気持ちが高ぶった。「うっせぇな」と毒づいて、久々のスタメンとしてピッチに立った。

 前半の45分間、鹿島は中村充孝と山本脩斗のゴールで2点のリードを奪うが、鈴木優磨は西の予言どおり、無得点に終わる。39分にはCKの折り返しに鋭く反応して右足を合わせるも、ボールはバーの上に。この他にも、もう1本シュートを放ったが、決め切ることができなかった。
 
 ハーフタイムに再び、西が「お前に期待なんかしてないから」とけしかける。
 
 もちろん、西は本気で罵倒しているわけではない。それは鈴木自身もよく分かっている。
 
「俺を奮起させるためですよ。大伍さんはそれを分かって言ってくれている」
 
 自分を奮い立たせてくれる激だと承知している。鈴木は心の中でつぶやいた。
 
「うっせぇな。黙って見とけ。点を取ってやるから」
 
 しかし、なかなかチャンスが訪れない。67分には、土居聖真に代わって遠藤康が投入されると、2列目から2トップの一角にポジションを移す。よりゴールに近いポジションでプレーできているにもかかわらず、シュートが打てない。
 
 じりじりとタイムアップの瞬間が迫る87分、ようやく歓喜が訪れる。ただひたすらゴールを狙い、ピッチを走り回っていた男の目の前に、最後の最後にボールが転がってきた。
 
 CKに昌子源がヘッドで合わせるも、これはポストに嫌われる。そのこぼれ球を山本が頭で押し込むも、楢崎正剛のセーブに防がれる。
 
 そして――楢崎が懸命にかき出したボールは、鈴木の足もとに。背番号34は思い切り右足を振り抜き、豪快にネットを揺さぶった。
 
「なにくそ、という気持ちがあった。いつもの俺だったらもう、あれだけ前半に外していたらネガティブになっていたかもしれない。でも、終わってから大伍さんに笑われたくないっていう気持ちで、最後まで走りました」
 
 試合後、西は鈴木を労った。
 
「な、言っただろ」
 
 鈴木に言わせれば、あたかも自分が決めたかのような表情だったという。その時も鈴木は思った。感謝を込めて、「うっせぇな」と。

次ページ「改めて、自分の目標は(金崎)夢生君だなって感じました」。

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