【名古屋】残留への救世主となるか? 上々デビューの扇原が覚悟の移籍に「思ったことはどんどん言いたい」

2016年07月10日 本田健介(サッカーダイジェスト)

芸術的なロングフィードにはスタンドから感嘆の声が。

名古屋でのデビュー戦は先発フル出場。能力の高さを感じさせた。(C) J.LEAGUE PHOTOS

[J1・第2ステージ2節]名古屋 0-3 川崎 7月10日/パロ瑞穂

 川崎に0-3の完敗を喫した名古屋は、当面のライバルとして順位を争っていた新潟に勝点でリードを許し、ついに降格圏の16位へと転落した。
 
 不甲斐ないチームの出来に観客席からはブーイングが飛び、小倉監督は試合後、「完敗ですね。力負けという試合です」となんとか声を絞り出す。
 
 名門チームが過去にない危機に瀕している。
 
 ただ、指揮官が力負けを認めた試合で輝くモノもあった。それは移籍加入し、先発デビューを飾った扇原とハ・デソンのプレーだ。特に扇原は「大きな展開を何度か見せてくれた」と小倉監督が語ったように、正確なロングフィードを幾度も披露。もともと正確なキックが持ち味の選手ではあったが、この日は通常よりも非常に精度が高かったように感じられた。
 
 6分、12分には味方を走り込ませる裏へのボールを見せると、16分には右サイドをオーバーラップした矢野にピタリと合うパスを通し、19分には今度は左サイドの野田の足もとへキッチリ収まるボールを送る。野田がトラップをした瞬間、その芸術的なパスに観客席からは感嘆と拍手が起こった。
 
 中学時代からC大阪の育成組織で育った扇原はクラブの未来を担う存在だった。しかし、チームがJ2で戦う今季は、新加入した山村とソウザに定位置を奪われ、ハノーファーからの山口の復帰でさらに苦しい立場に追いやられていた。そこで決断したのが愛着のあるクラブからの移籍だった。形態は「退路を断つために」と、レンタルではなく完全移籍。相当な覚悟を持ち名古屋にやってきたレフティボランチにとって、移籍初戦でこれくらいのパフォーマンスを見せるのは当たり前だったのかもしれない。
 
 本人は試合後、自らの出来よりもチームの敗戦を悔しがった。
 
「自分のプレーはある程度出せましたが、チームとしては0-3という完敗なので、勝たないと意味がないですし、勝つためにここに来たので悔しいです。連戦なのでしっかりと気持ちを切り替えたいです」
 

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