【現地発】15年来の育成の賜物――躍進アイスランドの物語は終わらない

2016年07月04日 熊崎敬

この楽しい祭りを終えたくない――サポーターは歌い続けた。

選手、サポーターともに、多くの話題を提供したアイスランド。2年後、彼らはさらに強さを増して世界の舞台に姿を現わすだろうか。 写真:佐藤 明(サッカーダイジェスト写真部)

 初出場アイスランドの冒険は、ベスト8で終止符が打たれた。
 
 前半で4-0と勝負は早々と決まってしまったが、そうなったのも無理はない。
 
 スタメンは過去4試合と全く同じ。選手層が薄いこともあって同じメンバーで戦ってきたが、さすがに疲労は隠せなかった。
 
 序盤からボールへの反応が鈍く、フランスの出足とテクニックに揺さぶられた。
 
 スタメンの顔ぶれとともに、過去4試合のアイスランドには興味深いデータがある。
 
 全ての試合でボール支配率が30パーセント台ということだ。つまり、押し込まれるのは彼らのリズム。だが12分、20分と早い時間帯に立て続けに失点したことで、根競べをする以前に、フランスの勢いに飲み込まれてしまった。
 
 もっとも、アイスランドが好印象を残したことは疑いない。
 
 前半の大量失点で言葉を失っていたサポーターたちは、後半になると再び迫力溢れる応援を繰り広げ、チームを奮い立たせた。
 
 チームも、この大声援に応える。
 
 積極果敢にフランス陣内に攻め込み、56分にシグソールソンが、83分にB・ビャルナソンがゴールを決め、サポーターたちを狂喜させた。すでにチームは偉業を成し遂げていたが、そのことに満足せず、最後までアイスランドらしさを貫いた。
 
 試合後、アイスランドのサポーターたちは、すっかりお馴染みになった「ウッ!」の手拍子で選手たちを讃えた。雨のサンドニに、サポーターたちの歌声がこだまする。
 
 選手たちがピッチを立ち去った後も、アイスランドのサポーターたちはスタンドに残り、この夏に定着したコールを延々と繰り返した。この楽しいお祭りを終えたくない、という気持ちが痛いほど伝わってきた。
 
 選手たちも、その気持ちは同じだったのだろう。背番号10のG・シグルドソンは再びピッチに戻り、サポーターにスパイクをプレゼントして別れを惜しんでいた。
 
 国中を熱狂させたアイスランドのEUROは終わった。だが、物語には続きがあるかもしれない。
 
 アイスランドの躍進は決してフロックではない。この15年来の選手、指導者の育成の賜物。サッカーが伸びていく下地は、すでにできているからだ。
 
 ひたむきなバイキングたちは、2年後のロシア・ワールドカップに再び襲来するかもしれない。
 
現地取材・文:熊崎 敬

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