【三浦泰年の情熱地泰】予選で苦戦するブラジル、最速で決めた日本。W杯や代表への価値観も移り変わる?

2025年04月02日 三浦泰年

ブラジルの知人からは「セレソンは普通のチームになった」の声も

ブラジルはW杯予選で苦戦が続く。一方で日本は世界最速で予選突破を決めた。(C) Getty Images

 南米ワールドカップ予選――。

 ブラジル代表がアウェーの地、ブエノスアイレスでアルゼンチン代表に1-4で負けた。オンタイムで確認していなかった自分は、サンパウロの知人から電話をもらいショックを受けた。
 
 その頃、日本代表は早々とワールドカップ(W杯)8回連続出場を決めた。(決めていた)世界最速で決めた日本。何年か前までは予選のプレッシャーと緊張感をはね返し、苦しみながらも必ず予選を突破して国民の期待に応え、国民と共に喜びを分かち合ってきたW杯予選。

 ブラジルは何年か前までは南米予選を通過するのは当たり前。負けるという事の方が珍しく、強豪国が出揃う南米チームの中でも常に違いを見せながら予算を突破してきた。

 アジアと南米の予選の比較はできないが、我々の世代は1994年アメリカW杯の予選で敗れドーハの悲劇と呼ばれる経験をした。その一方で、ブラジルは本大会も選手層の厚さをしっかり示し4度目の優勝を遂げた。

 8年後は2002年日韓W杯。日本は1998年フランスW杯を自力で突破し、自国開催を実現し、ブラジル代表は1998年こそ優勝を逃したが、2002年は日本で決勝でドイツに2-0で勝利し5度目の優勝。

 お互い前回のカタール大会まで日本は7回連続で、ブラジルは全大会出場を継続してきている。

 僕が生まれた1960年代からプロリーグ(Jリーグ)が開幕される前の1980年代では、日本のW杯出場は現実的なものではなく、夢で見に行くもの…いや、夢見ることさえ難しい大会だった。

 敗戦後、電話の向こうでサンパウロの知人が「皆んなが笑ってるよ」と困り声を上げていた。ブラジル代表は普通のチームだと…。

 片や日本となると、「今夜の試合はどうなると思いますか?」はもちろん、「日本は何故、こんなに強くなったのですか?」という率直な質問をされる。

 同時に、昔の苦しみながら予選を突破していた頃から応援しているサポーターや私の知人などは「何かが違う」。昔は突破の懸かった試合はテレビの前で、正座で見ていた…と。もっと緊張感が見る側にもあったと。中には突破の懸かっている試合でありながら「大丈夫だなーと思った瞬間に寝てしまったよ」という人もいる。

 ブラジルのサッカー文化の中で育ってきた人々は、メディアも含めやはり厳しい批評をしているという。ヨーロッパ組が中心に構成されている代表に対して、選手のメンタリティーについて鋭い指摘をしている。若くしてヨーロッパへ移籍していくのが通常になり、若く母国ブラジルを離れている彼らにとって、クラブとセレソン(代表)どちらが大事なのか? 代表にエントリーされ、ヨーロッパの目に叶うまでは必死だった彼らの今のプレーは、ブラジル国民にとって納得いくものではないようだ。
 

次ページ日本のW杯優勝。そんなに甘くはないという気持ちと、もしかしたら…

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事