英国EU離脱でサッカー界の反応は?「選手獲得への影響は今夏から」「自国選手育てる最大の機会」

2016年06月28日 松澤浩三

記録的なポンド安で今夏の選手獲得から不利な条件を強いられることに。

EU離脱による記録的なポンド安など経済ショックが襲う英国だが、イングランドはアイスランドにまさかの逆転負けでEURO敗退と、サッカー面では英国内は明暗が分かれている。(C) Getty Images

 6月23日。英国では、国民投票により欧州連合(EU)からの離脱が決定した。これにより、今後英国では様々な変化が予想され、極端な経済力低下を含めた政情不安が心配されている。それでは、国民的スポーツであるサッカー界への影響はいかなるものか。
 
 現状で分かっていることはさほどない。それというのも、英国はまだEU側に対して正式な離脱の承認申し入れ(リスボン条約第50条の発動)をしていないからだ。それでも、EU残留を押していたデイビッド・キャメロン首相は"敗北"の責任を取る形で辞意を表明、すでに英国内では変化が生じている。
 
 だが同首相は、離脱に向けては「新しい指導部が必要」としている。「10月までに新しい首相が着任しているべき」と述べ、この言葉どおりに事が進めば、今後3か月の間に新リーダー決定後、その人物により離脱の発動が行なわれたうえで、英国とEUの話し合いが始まることになる。その中では、労働者のEU域内の自由移動の制限や通商関係の交渉がなされて、最大2年間とされている交渉期間を経た後、最終的に英国はEUを離れることになるというわけだ。
 
 とはいえ、国内メディアの中では、「今夏の選手獲得からすでに大きな影響を及ぼす」と報道する媒体もある。その理由は離脱決定直後から始まった英ポンドの記録的な下落で、当然これは各クラブにとっても大きな痛手となるはずだから、というものだ。
 
 先週初めまで1ポンド=1.35ユーロだったが、現時点ですでに1ポンド=1.20ユーロまで下落している。今後もポンドは下がり続ける可能性が高く、もしポンドとユーロが同等の価値になった場合、EU内のクラブから新選手を獲得する際には出費がかさむというわけである。
 
 例えば、先週まで市場価値1350万ユーロの選手は1000万ポンドで獲得できたが、もしポンドとユーロの価値が同じであれば獲得費用は350万ポンド割増しとなる。もちろんポンド安は対ユーロだけではないため、EUとそれ以外の全世界のクラブとのすべての取引において、国内のクラブは不利な条件を強いられることになる。
 
 より長期的な視点で考えれば、選手の給料やビザの面でも大きな問題が生じてくることになる。特に後者は各クラブにとって、大きな悩みの種になるはずだ。
 

次ページ正式離脱は2年後もビザ取得が困難なEU圏選手が100人以上。一方で自国選手育成のために歓迎の声も。

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事