森保一監督が最終予選で貫いた“3バック”は本当に最適解か? W杯出場決定から、再考の構想はあるはずだが…

2025年03月21日 加部 究

前半の苦戦は必然。改善に導いたのは監督のカードの切り方

前半はバーレーン相手に苦しんだ日本。ここで森保監督の手腕が発揮された。(C)SOCCER DIGEST

 日本が5-0で快勝した前回、アウェーでの同カードとの相違を、バーレーンのドラガン・タライッチ監督は、こう説明した。

「日本が変わったわけではない。我々がだいぶ改善されたんだ」

 欧州組で構成された日本代表にとって、ホームゲームにコンディション面でのメリットはない。逆にバーレーンは26人中、自国以外のチームに属するのがわずか3人(しかも、うち2人はUAEとクウェート)なので、いつでも合宿やトレーニングが可能で、万全の準備を施して来日した。

 実際、タライッチ監督は前日会見で「勝つつもり」と手応えを口にしていたほどだったが、「実際に戦ってみて、日本選手たちのクオリティに驚かされた」と振り返っている。

 バーレーンが綿密な戦略を落とし込み、コンディションを整えて臨んだ試合に、日本は分析された通りのメンバーで、これまでと同じ戦い方を選択したのだから、特に前半の苦戦は必然だった。

 バーレーンは、時には最後尾に6人を並べながらもコンパクトゾーンを保ち、前から勤勉にプレッシャーをかけてきた。とりわけ序盤の日本はビルドアップの構築に苦しみ、最終ラインからMFを飛ばして、早めに裏狙いのロングボールも多用させられている。
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 また3バックの脇を狙われれば、日本の重要な武器になるはずの三笘薫、堂安律の両ウイングバックも、最終ラインまで戻らなければならなかった。バーレーンの選手たちは、技術や資質が見劣りするわけではなく、むしろ戦術的には整理されていたので、前半は入念な準備の成果が如実に表れていたはずだ。

 だが、それでも日本を改善に導いたのは、森保一監督のカードの切り方だった。後半開始から田中碧、そして何より63分に鎌田大地を送り込んだことで、中盤での選手間の距離が適性に修正され、数的優位を作り、テンポ良く攻撃へ移行する日本の長所が発揮されるようになった。

 本来ならクリスタル・パレスに加入後、プレミアリーグでゴールもアシストもない鎌田の起用は競争原理に反している。だが所属クラブでの実状より、日本代表での立ち位置や特性を重視し、指揮官は中盤の潤滑油の補給を優先した。田中は最終ラインまで、鎌田も適宜左右前後に移動し、複数の起点が担保され、前半は孤軍奮戦だった久保建英の創造性が連係を伴って何度も輝いた。
 

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