東京駅から最も近いスタジアムの建設、関東リーグ1部・6位でも集客率アップ...GMも胸を張る風間八宏体制2年目の南葛SCの現在地

2025年03月18日 本田健介(サッカーダイジェスト)

岩本GMが語る風間監督の影響力

南葛を指揮する風間監督。Jリーグ時代と変わらない魅力的なサッカーを追い求めている。(C)南葛SC/松岡健三郎

 Jリーグの新シーズンが開幕した傍ら、3月9日に2025年の初陣を迎えたクラブがある(リーグ開幕は4月5日)。尖りまくった戦い方、クラブ運営、楽しむというサッカーの真髄を教えてくれる稀有なチーム、風間八宏監督が率いる南葛SCである。その挑戦を追ったレポートをお届けする。(全2回/1回)

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「すごく速くなったでしょ」

 昨年末、風間八宏監督は少年っぽい笑顔を向けてくれていた。

 技術力を大切にし、何よりサッカーの魅力を追求する指揮官は、常々、技術とは速さにつながると話している。

 風間監督が昨季から、テクニカルダイレクターの肩書きとともに指揮を執るのが、関東リーグ1部、言うなれば"J5"のカテゴリーに所属する南葛SCである。

 そう聞くと、プレーレベルを疑問視する人もいるのかもしれない。確かにまだ粗削りな部分は大いに残す。しかし、風間監督が就任した昨季、個々の技術力は向上し、試合を見ていても後ろや横へのパスが減少。常に矢印は前を向き、正確にボールを止め、蹴れるからこそ、全体のスピードが上がる。関東リーグではなかなかお目にかかれない崩しを見ることもできた。

 風間監督も選手たちの成長に目を細めながら、「クラブも面白いんだよ」と胸を張る。

 ご存知の通り南葛SCは「キャプテン翼」の原作者である高橋陽一氏がオーナー兼代表取締役社長を務め、メディア界でも活躍した岩本義弘氏がGMとしてチーム強化と事業推進を担当。そして昨年には、様々な突飛なイベントで川崎の素地を築いた天野春果氏がプロモーション部部長に、さらに年末には元日本代表の岡野雅行氏が事業本部長に就任。エネルギーに満ちている。

 成績面では昨季は関東リーグ1部で、6勝4分8敗の6位。昇格はならなかったが、東京都社会人チャンピオンシップ(東京カップ)、KSL市原ATHLETAカップというカップ戦ふたつで優勝を果たしている。

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 風間監督を招聘した岩本GMは改めて振り返る。

「昇格はもちろん毎年目指していますが、やっぱり大事なのは積み上げ。世界中のクラブを見ても積み上げをしっかりできているチームって限られますよね。そういう意味では、フロンターレの時も、グランパスの時も、積み上げを常にやってきた風間さんってやっぱり異質な存在なんだなって、指揮1年目で改めて強く感じました。

 どうして積み上げられるのかといえば、フィロソフィーがしっかりしていることはもちろん、風間さんもJリーグの監督から離れたここ数年、子どもたちの指導などにも当たり、選手への言葉が凄く丁寧になっている。そこも、このカテゴリーにより合っているのかなと感じます。それに風間さん自身もシーズンを通して変化している。家にいる時もずっとホワイトボードいじっているようですし、ここまでサッカーに時間をかける人なんだと実感しました。

 それに選手を成長させればその先に勝利があるのは間違いない。特長的だったのは、ピッチ、ミーティング、我々スタッフと食事をしている時、風間さんは1回も順位の話をしなかった。オフの時も含めて1回もですよ。そんな監督、世界中にいないだろうな、と。

 やれることを増やす、それを突き詰める。このカテゴリーだからこそかもしれませんが、選手はどのタイミングで変わるか分からない。だから誰の成長も諦めないと風間さんは考えていました。もちろん(2025年へ向けた)編成で、ほぼ半数の選手が引退や移籍でチームを去ることになりましたが、誰もが成長しましたし、みんながサッカーって楽しいものだという原点に立ち返り、シーズンを通して嫌な雰囲気になることが1回もなかったです。43人の大所帯でそれができたことって凄いことです。

 ファン・サポーターの方々も見ていると、選手が成長していることが分かるのではないでしょうか。だから昇格できず、順位も6位で、本来は僕らフロントを含め批判されてもおかしくなかったのですが、その声がほとんどなかった。それも凄いことだと思います」

 川崎時代の中村憲剛、大久保嘉人、名古屋時代の佐藤寿人、玉田圭司のように風間監督は率いたチームで"何歳でも成長せきる"という考えを実証してきたが、南葛では若き選手たちとともに、Jリーグで実績を残してきた今野泰幸、大前元紀らが再び輝いているのも特長と言えるだろう。

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