「まさか日本代表になって、海外にも行けて、チャンピオンにもなれるとは」パシリから始まった李忠成のキャリアは120点。興味深い2013年と同じ質問への答え

2025年03月06日 有園僚真(サッカーダイジェストWeb編集部)

「35歳でどうなってるか?お金持ちになるのが俺の夢(笑)」

自身の決勝点でアジアカップを制した直後のセレモニー。李氏にとって忘れられない瞬間だ。写真:田中研治(サッカーダイジェスト写真部)

【不屈のストライカー特別インタビュー(9回/全10回)】

 不屈の闘志で成り上がり、その左足で光と影を目定めた李忠成。ユニホームを脱いだ2023年9月からは新たなステージで挑戦を続けている。特別インタビューで胸の内に迫った。

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 今回の取材にあたり、李氏の過去のインタビューをYouTubeで探していると、FC東京に在籍していた2013年5月にアップされたものが出てきた。その際に上がっていた「もしタイムマシンがあったら、いつに戻りたい?」という質問を10年以上経った今、改めてしてみた。すると、やはりというべきなのか、同じ答えが返ってきた。

「1ミリも戻りたくないですね。戻るとしたらどこだろうな…ないですね。サッカー選手って相手チームがいて対峙するじゃないですか。僕が抜いてシュートを打つ。僕の評価は上がるけど、相手の選手は契約満了になって食いっぱぐれるわけですよ。右に行くか、左に行くか、上に行くか、後ろに戻るかの4パターンしかないなか、その駆け引きに勝ってきたからこそ今があるわけで、それって本当1秒もない世界です。『今、同じことをやれ』と言われた時に正解に辿り着ける自信がないです」

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 一方で、「現役生活を20年続けられる?」という問いに対する、当時27歳の予想と結果は異なっていた。2013年には「18歳からで38歳でしょ?それはやりすぎかな。35にしましょう。35歳でどうなってるか?お金持ちになるのが俺の夢(笑)」と語っていたが、李氏は38歳になる年までプレーを続け、平均引退年齢が26歳と言われるサッカー界で長期のキャリアを築いた。

 予想を上回るキャリアを送れたと言える。自分の現役生活に点数をつけるとしたら、「120点」だ。

「FC東京でのプロ1年目はパシリから始まって、サッカーどころじゃなくて、人にへいこらへいこらしていた自分が、まさか日本代表になって、オリンピックも出て、海外にも行けて、チャンピオンにもなれるとは考えられなかったので。あの1年目があったからこそ、全ての勝負において全ベットできたんすよ。パシリ以下はないです。何か保険を置くんじゃなくて、すごろくで言うと『そこに戻る』。最下層がもう分かっているので、戻ればいいんでしょって。ベッドしてすごく大きくなって、ここまで来られたので、120点です」

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