「移籍したら?」佐藤寿人が “159点目”に込めた3つの想い。男泣きの背景とは?

2016年06月19日 塚越 始(サッカーダイジェスト)

2点差に広げるとともに、浦和の反撃の意欲を削ぐ一撃を突き刺す。

試合を決定づける4点目を決めた佐藤。お立ち台でのヒーローインタビューで、思わず男泣きをした。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

[J1・1stステージ16節]サンフレッチェ広島4-2浦和レッズ
6月18日/エディオンスタジアム広島
 

 広島の森保一監督が2枚目の交代カードを切る。61分、森崎和幸と交代して佐藤寿人がピッチに登場――。エディオンスタジアムを埋めた大観衆からのこの日最大の拍手が、背番号11を迎え入れる。
 
 スコアは1-2。広島が浦和に1点リードを許していた。しかも主将の青山敏弘が負傷により、40分に退いていた。

 状況は極めて厳しい。ただ、このスコアのまま試合が終わる気配はあまり感じられず、なにかが起きそうな期待のほうがスタンドを占めていた。
 
 だから抜群のタイミングで、佐藤が投入されたとも言えた。

 期待が大きければ大きいほど、それをパワーにしてしまう。ベンチスタートの悔しささえも発奮材料にする。彼がやってのけたのは、まさにエースの仕事だった。
 
 布陣は3-4-2-1から3-5-2(アンカー+2シャドー+2トップ)に変更。背番号11が前線の高い位置でボールの収まりどころとなったことで、P・ウタカも、浅野も、柴崎も、攻撃のギアを上げて、思い切り前線へ繰り出す。
 
 仲間からのパスが背番号11に集まり、背番号11からも仲間の特長を引き出すパスが供給される。「正」のスパイラルがチームに推進力を与え、64分、CKから塩谷が驚愕のスーパーボレーを突き刺し、67分、柴崎のポスト直撃弾のこぼれ球を再び塩谷がねじ込む。

 瞬く間に、広島が3-2と逆転に成功した。
 
 とはいえ、広島の守備もまだ安定せず、攻撃的な陣形にしている。ワンプレーで状況ががらりと一変しかねない――。両チームともに疲労度も極限に近づく、ひりつくような展開のなか、途中出場でまだ体力を余している佐藤が、浦和の集中の切れた一瞬を見逃さなかった。
 
 西川がペナルティエリア前にいた柏木にショートパスをつなぐ。プレスを受けた柏木はリベロの遠藤にバックパスを送ったが――その若干弱かったパスに猛烈なスピードで詰めたのだった。
 
 ボールをかっさらった広島のエースは、GK西川を振り切り、左足で無人のゴールネットにシュートを突き刺す。2点差に広げるとともに、浦和の反撃の意欲を完全に削ぐ(もっと大きなダメージを与えたかもしれない)、意味を持つ一撃となった。
 
 そして試合後、ヒーローインタビューに答えるため、佐藤がメインスタンド前のお立ち台に上がる。
 

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