モウリーニョがマドリーに植え付けた被害妄想的な“クレーム文化”。本来のアイデンティティとは真逆の道を…【現地発】

2025年01月21日 エル・パイス紙

モウリーニョはマドリーに存続し続けている

自身を反体制派の英雄に仕立て上げたぺレス会長。(C)Getty Images

 アスレティック・ビルバオがイスタンブールに乗り込み、フェネルバフチェと対戦した際に、敵将のジョゼ・モウリーニョは古巣のレアル・マドリーにおべっかを言うと同時に、余計ともいえるアドバイスをした。

 そのメッセージは、ニコ・ウィリアムスの獲得に本腰を入れるべきというもの。キリアン・エムバペとヴィニシウス・ジュニオールとの強力3トップ形成を夢見て、マドリーがアスレティックのウイングに関心を寄せていることは事実だ。モウリーニョは、そのことを利用して、ラミン・ヤマルよりも優れている点を強調して比較論争を煽ることで、バルセロナのカンテラーノをことごとく否定するマドリディスタの過激な層を喜ばせようとした。

 モウリーニョはマドリーに郷愁を抱いている。両者が袂を分かって以来、チャンピオンズリーグ(CL)のタイトルを積み重ねてきたマドリーに対し、モウリーニョのキャリアは下降線を辿っている。

 フロレンティーノ・ペレス会長もまた彼を恋しがっているという噂を耳にすることがあるが、幸か不幸かビセンテ・デル・ボスケ、ジネディーヌ・ジダン、カルロ・アンチェロッティといったモウリーニョと対極に位置する調整型の指揮官のもとでマドリーはビッグイヤーの数を増やしている。ペレスは、本心では権威を振りかざすモウリーニョのようなタイプを好むが、マドリーでは強権発動型の指揮官は機能しない。したがっていくらペレスが望んでも、再招聘するのは困難だろう。
 
 しかし、ある意味では、モウリーニョはマドリーに存続し続けている。ペレスはもう何年も前にモウリーニョはマドリーの価値観を体現していると明言したことがあった。実際、先月のソシオ総会で彼の演説を聞いて分かったことは、クラブの伝統的な価値観が修正され、それがマドリーを不健全な迫害妄想に位置付ける被害者的な言説に取って代われていることだ。

 ラ・リーガ、スペインサッカー連盟、UEFA(欧州サッカー連盟)、サンティアゴ・ベルナベウの近隣住民、もちろん、審判もだ。ペレスは自身を反体制派の英雄に仕立て上げ、彼の功績に敬意を払おうとしないあらゆる団体、人間を敵視し、どんな障壁をも打ち破ろうと躍起になっている。

【画像】日本代表を応援する「美女サポーター」を厳選!

次ページグアルディオラのアシスタントコーチの目を突く暴力沙汰も肯定

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事