【EURO2016】ブレイク候補のエムボロが2試合連続の低調……。その理由と潜在能力をスイス人記者に聞いた

2016年06月16日 白鳥大知(サッカーダイジェスト特派)

思うように動かない自分の身体に苛立っているように見えた。

ルーマニア戦では64分から途中出場したエムボロ。しかし、まったく良いところなく試合終了のホイッスルを聞いた。写真:佐藤明(サッカーダイジェスト写真部)

 EURO2016の有力なブレイク候補と目されていたのが、スイスのブレール・エムボロだ。
 
 超人的なスピード、規格外のボディーバランス、正確な右足と三拍子が揃うCFと評判で、所属するバーゼルでは17歳で主力に定着。すでにバルセロナ、ユベントス、マンチェスター・ユナイテッド、チェルシーなどメガクラブが獲得に興味を示し、19歳にして2000万ユーロ(約25億円)の市場価格が付いている超逸材だ。
 
 しかし、2015-16シーズンの終盤に膝を負傷。EUROの登録メンバー入りは果たしたものの、コンディションが懸念されていた。
 
 実際、スイスにとって初陣だった6月11日のアルバニア戦は、62分から登場するも明らかに身体のキレを欠いており、見せ場はまったくなかった。
 
 迎えた6月19日のルーマニア戦も64分から登場してCFに入り、途中出場にしては多くのプレー機会を得た。しかし、ドリブル失敗が4回、枠外シュートが1本、シュートブロックが1本、スルーパスに届かなかったのが2回と、まるで良いところがなし。唯一「おっ」と思わせたのが、距離的に届かないように見えた後方からのロングフィードに追い付いて右足でコントロールして味方に繋いだ、77分のワンプレーだけだった。
 
 ミスをするたびに苦悶の表情を浮かべ、思うように動かない自分の身体に苛立っているように見えた。
 
 試合後、記者席からメディアセンターに向かう途中でスイス人記者に「エムボロって本当にすごいの?」と尋ねると、こんな答が返ってきた。
 
「いや、すごいんだよ本当に。膝が治っていないし、たぶんフィジカルコンディションは40%くらいだと思う。乗っている時はマリオ・バロテッリみたいなんだぜ」
 
 やはりコンディションが整っておらず、ここ2試合は持ち味が出せていなったようだ。6月19日のフランス戦までには、多少なりとも状態が良くなればいいが……。
 
 それにしても、「バロテッリか……」と思った。早くから将来を嘱望され、実際に心身のコンディションが整っている時は世界最高レベルの打開力を誇る一方で、メンタル的な安定に欠け、怪我も多く、世界のトップシーンから消えかかっているバロテッリ。エムボロには是非とも、この"元超逸材"を反面教師にしていただきたい。
 
現地取材・文:白鳥大知(サッカーダイジェスト特派)
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