不言実行から有言実行へ。大島僚太の闘志に火をつけた"ある出来事"

2016年06月15日

屈辱の交代を糧に代表へ。初選出はスタート地点。

キリンカップでA代表初招集を受けた大島は、リオ五輪代表でも主力を張るボランチだ。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

 不言実行は、いかにも大島僚太らしい。6月のキリンカップで日本代表に初選出されると、クラブを通じて「最初に聞いた時は驚きました」とコメント。言動は控え目で、大言を吐かないタイプだが、それでいて胸の内では密かに大志を抱いていた。
 
「1月のリオ五輪アジア最終予選が終わった後、もっと上でプレーしたいという気持ちが芽生え、今シーズンが始まる時に、『今年中に日本代表に入る』という目標を立てた」
 
 世代別代表の常連で、リオ五輪を控えるU-23代表でも主力を担うだけに、その実力は折り紙つきだ。

 ヴァイッド・ハリルホジッチ監督が「パス技術、パススピード、ビジョンが素晴らしい」と称賛したように、川崎の中盤でタクトを振るい、リーグ屈指の攻撃を支える。足もとの技術はチーム指折りで、中村憲剛が「自分が僚太と同じ年齢の時より、はるかに上手い」と認めるほどだ。
 
 プロ1年目からコンスタントに出場を重ねて攻撃センスを発揮した一方、球際の守備は長年の課題だった。
 
 しかし、今季は目に見えて守備意識が改善。11節の柏戦では、クロスのこぼれ球に素早く寄せて、顔からシュートブロックに飛び込んだ。ファウル覚悟で激しく潰しにかかる場面が格段に増え、競り合いでの粘り強さも向上。ハリルホジッチ監督も「ボールを奪う部分で、アグレッシブさが出るか見ていた。そこが伸びていた」と初招集の理由を明かす。
 
 今季、秘めた闘志に火をつけるある出来事が起きた。6節の鳥栖戦、大島は2ボランチの一角で先発するも、チームは開始20分頃にシステムを変更。トップ下の中村をボランチに下げた関係で、大島は玉突きのように右サイドハーフに回され、さらに41分で交代を命じられた。
 
 早々に主戦場から外されたうえ、前半での交代劇。右足首の負傷明けという弁解の余地はあったが、今季からクラブで日本人初の10番を背負う若武者は「上手くいかなかった」と声を絞り出し、肩を落とした。
 
 中村は「悔しい想いをして火がつくだろうね」と心情を慮おもんばかりつつ、あえて手厳しい要求を出している。
 
「僚太の課題は、(ボランチの)相方が誰であろうと、状況をコントロールすること。良くも悪くも、自分のリズムでプレーするから、良い時はハマるけど、悪い時は引っかかってしまう。そういうことを考えるきっかけになればいい」

次ページ風間監督からの期待は大きい。「中心は自分だと考えるぐらいでないと」。

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事