【EURO 今日は何の日】6月14日「イタリアの慢心、チェコの覚醒(96年)」

2016年06月14日 サッカーダイジェストWeb編集部

主力選手を温存して臨み、無名集団に最悪のかたちで敗北…。

チェコを見下していたのはチームだけではなかった。この試合の時、スタジアムでの応援よりも、市内観光を選んだイタリア・サポーターは多かったという。 (C) Getty Images

 EURO96に臨んだアリーゴ・サッキ率いるイタリアは、予選の時点で何度も批判に晒されてきた。
 
 ユーゴスラビアから独立してから初のメジャーイベント参加となったクロアチアの後塵を拝して予選2位。この大会から出場枠が16に倍増したことで、辛くも本大会行きのチケットを手に入れたのである。
 
 最終メンバーの決定においても、人々はサッキに異論を唱えた。
 
 チャンピオンズ・リーグ制覇を果たしたばかりのユベントスのエース、ジャンルカ・ヴィアッリや、直前のセリエAで3度目の得点王に輝いたジュゼッペ・シニョーリ、そしてイタリアの至宝、ロベルト・バッジョが外れたからだ。
 
 それでも、本大会ではロシアとの初戦で2-1の勝利。ピエルイジ・カジラーギの2ゴールで勝点3を奪ったイタリアは内容的にも危なげなく、初戦でチェコを一蹴(2-0)したドイツとともに、順当に準々決勝へ進むものと思われていた。
 
 その確信はイタリアにもあったようだ。当時、欧州でもあまり名の知れた選手がいないチェコに対し、サッキはロシア戦から5人もメンバーを入れ替えて試合に臨んだのである。そのなかにはカジラーギ、そして彼と好連係を見せたジャンフランコ・ゾーラも含まれていた。
 
 6月14日、リバプール・アンフィールドのピッチに立ったイタリアの面々は、やや気が抜けていた。そんな彼らに、チェコがいきなり冷や水を浴びせかける。開始4分、まだ短髪だった若いパベル・ネドベドがゴールネットを揺らしたのだ。
 
 右タッチラインでのスローイン→ボールキープ→センタリング→ネドベドのシュートというチェコの一連のプレーに対し、イタリアの選手はプレッシャーが緩く、対応も遅かった。
 
 堅守をウリにするはずのチームが、早くも失点。しかし、これで少し気を引き締め直したイタリアは、18分に大会初スタメンのエンリコ・キエーザが無理な体勢からのシュートで同点ゴールを挙げた。
 
 ここから勢いに乗り、逆転するかと思われたイタリアだが、やはりどこか動きは緩慢であり、一方のチェコはバイタリティ溢れるプレーで、積極的に格上チームのゴールに迫ろうとする。
 
 次の1点は35分に生まれた。チェコの勝ち越し点、そしてあまりに早すぎる決勝点だ。右サイドから入ったクロスをラデク・ベイブルがダイレクトで叩き、ユベントスのGKアンジェロ・ペルッツィの牙城を破ったのである。
 
 これで、ようやく目が覚めたイタリアだったが、メンバーを落としていたチームは思うような反撃を見せられず、時間とともに焦りが出ると、攻守でチグハグなプレーをさらけ出し、同点のゴールは遠くなる一方だった。
 
 楽勝のはずが、あまりに痛い敗北。計算していた勝点3を得られなかったイタリアは、他力本願の状態でドイツ戦を迎えることとなってしまった。
 
 そして5日後、この大会で3度目の優勝を飾るドイツに、浮足立ったイタリアは1点を奪えずに敗退が決定。間もなくしてサッキ・アッズーリは崩壊を迎えた。
 
 一方、チェコはここから決勝に進出して世界を驚かせ、以降は豊富なタレントが次々に欧州のビッグクラブに進出。そしてチームは強豪国のひとつとして認知され、どの大会でも注目を浴びる存在となっていった。
 
◎6月14日に行なわれた過去のEUROの試合
◇1972年ベルギー大会
準決勝
西ドイツ 2-ベルギー
ソ連 1-ハンガリー
 
◇1984年フランス大会
グループステージ
ドイツ 0-ポルトガル
ルーマニア 1-スペイン
 
◇1988年西ドイツ大会
グループステージ
西ドイツ 2-デンマーク
イタリア 1-スペイン
 
◇1992年スウェーデン大会
グループステージ
フランス 0-イングランド
スウェーデン 1-デンマーク
 
◇1996年イングランド大会
グループステージ
チェコ 2-イタリア
ポルトガル 1-トルコ
 
◇2000年ベルギー・オランダ大会
グループリーグ
イタリア 2-ベルギー
 
◇2004年ポルトガル大会
グループリーグ
デンマーク 0-イタリア
スウェーデン 5-ブルガリア
 
◇2008年オーストリア・スイス大会
グループステージ
スペイン 2-スウェーデン
ロシア 1-ギリシャ
 
◇2012年ポーランド・ウクライナ大会
グループステージ
イタリア 1-クロアチア
スペイン 4-アイルランド
 
※日付は全て現地時間
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