東京Vユースが11年ぶりのプレミア復帰。川村楽人が明かす8年前の参入戦敗退を知るOBから託された想い

2024年12月09日 松尾祐希

「自分がプレミアリーグに上げた男にならないといけない」

プレミア復帰を果たし、感極まる川村。写真:松尾祐希

 U-18高円宮杯プレミアリーグ参入プレーオフの決勝戦が12月8日に開催された。

 全国のプリンスリーグを勝ち上がってきた16チームを4ブロックに分け、4チームのトーナメントを制したチームが、それぞれ昇格の権利を手にできる。

 8年ぶりの参入戦出場となった関東王者の東京Vは、1回戦でサウサンプトン加入内定のFW高岡伶颯(3年)を擁する日章学園を2-1で撃破。14年シーズン以来となるプレミアリーグ復帰に王手をかけ、富山U-18との大一番を迎えた。

 劣勢だった前半を跳ね返し、鮮やかな逆転勝利。0-1から後半の立ち上がりに2ゴールを奪い、最後までリードを守り切った。試合終了のホイッスルが鳴った瞬間、感情が爆発。11年ぶりのプレミア復帰。クラブOBでもある薮田光教監督を始めとするコーチングスタッフ、苦楽をともにしてきた選手たちが輪となり、雄叫びを上げながら最高の瞬間を噛み締めた。

 会場となったBalcom BMW 広島総合グランドは、8年前の参入プレーオフでも戦った場所。1回戦で当時1年生だったMF佐野海舟(現マインツ)らを擁する米子北に1-3で敗れ、先輩たちは涙をのんだ。

 もちろん、その出来事を知る選手はおらず、スタッフもほとんど入れ替わっている。そうした状況下で、先輩から想いを託された選手がいた。来季からトップチームでプレーするFW川村楽人(3年)だ。

 プレーオフが開催される広島に旅立つ前、8年前のチームでキャプテンを務めていたCB深澤大輝(現・東京V)から話があったという。

「自分たちの代がプレミア参入戦に出たけど、それが最後だから頼むよ」(深澤)

 当時のメンバーでプロの道に進んだ選手は多い。深澤と大久保智明(現・浦和)が3年生で、谷口栄斗(現・東京V)、藤本寛也(現ジル・ヴィセンテ)らが2年生で出場。1年生だった森田晃樹(現・東京V)は怪我で帯同していなかったが、錚々たる面々がいた。
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 そうした話を聞き、川村は覚悟を決めたという。

「自分がプレミアリーグに上げた男にならないといけない」

 ヴェルディの未来を担う後輩たちに最高の舞台を残すのはもちろん、これまでクラブの歴史を築いてきた先輩たちの想いに報いるためにも、絶対にプレミア復帰を果たす必要があった。

 ヴェルディに息づく歴史と伝統――。試合後、川村は感極まった。試合でゴールを決められず、悔しい想いがあったのかもしれないが、それ以上に今季最大のミッションをクリアできたことが嬉しかった。

「本当に今季はプレミア復帰を意識して取り組んできた1年だった。ここだけにフォーカして戦ってきたので、喜びが大きかったと思う。素直にホッとしている。そういう気持ちが大きいです」

 先輩たちが涙を流した場所で新たな歴史を作った。バトンを後輩に託した川村に思い残すことない。最高の置き土産を残し、胸を張って次のステージへ進む。

取材・文●松尾祐希(サッカーライター)

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