【検証 日本代表】光明は宇佐美の仕掛けと遠藤のデュエル。一方で、吉田はディフェンスリーダー失格!?

2016年06月08日 小田智史(サッカーダイジェスト)

【アタッキングサード|宇佐美の仕掛けで突破口を見出すも、選択肢の増加は必須】

ホームの吹田スタジアムを沸かせた宇佐美。「あれだけボールが来れば良い形を作れる」と話す前半の形をコンスタントに出していければ、大きな武器になる。 写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

[キリンカップ]日本代表1-2ボスニア・ヘルツェゴビナ代表
6月7日/市立吹田サッカースタジアム
 
 1-2と逆転負けを喫したボスニア・ヘルツェゴビナ戦(以下、ボスニアHG)の収穫と課題は? ブルガリア戦に続き、アタッキングサード(相手ゴール側のゾーン)、ミドルサード(真ん中のゾーン)、ディフェンディングサード(自陣ゴール側のゾーン)に分けて日本代表のパフォーマンスを検証する。

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 本田圭佑と香川真司が不在のアタッキングサードで目を引いたのが、「清武→宇佐美」のラインだ。清武がサイドに捌き、宇佐美がタメを作りながら仕掛け、時にはオーバーラップしてきた長友を使い、時には逆サイドの浅野に振ってゴールに迫った。28分の先制点のシーンでも、宇佐美が長友を囮にカットインし、相手の守備網を崩して清武のシュートをお膳立てしている。前半、攻撃を牽引したのは間違いなくこのふたりであり、宇佐美が「あの(速い)テンポで、あれだけボールが入ってくれば良い形でやれる」と自信を深めたのは収穫だろう。
 
 ただ、浅野の裏への動きを使っていく戦術に切り替えた後半は、お世辞にも攻撃が機能していたとは言い難い。ウイングやトップ下に加え、ボランチからもロングボールを供給して浅野を走らせていたが、ボスニアHGの守備ブロックを崩すには至らず。右サイドに偏重していくにつれ、前半輝きを放った宇佐美も徐々に見せ場が減ってしまった。
 
 清武ら複数の選手が「後半は攻撃が単調になってしまった」と振り返る。特に、ボスニアHGの最終ラインは身長194センチの長身CBシュニッチを筆頭に、全員が180センチ以上。屈強な相手に真っ向勝負を挑んでも、簡単にチャンスは作れない。岡崎や浅野の裏狙いだけでなく、前半のようにサイドで揺さぶっても良かったのではないか。
 
「ブロックを敷かれた時の崩し方は改善点がある」(長谷部)なかで、代表デビューを果たした小林祐希は流れを変えるアクセントになった。停滞するチームを見て、裏ではなく、スペースでボールを受けてスルーパスを狙うプレーにシフト。78分にはペナルティエリア外から果敢にミドルシュートを放って、突破口を見出そうとした。ゴールこそ割れなかったが、小林祐が入った74分以降は攻撃の圧力が高まったのは間違いなく、自らの判断でバリエーションを増やした働きには一定の評価を与えていいだろう。
 
 もっとも、相手より多くのチャンスを作りながら、1点しか奪えずに敗れたのが現実だ。15分には清武のシュートがバーを叩き、25分には浅野がフリーでヘディングシュートを放ちながら、ゴールを挙げられなかった。今後も、本田や香川を欠くシチュエーションは考えられるだけに、「最後の部分で正確性が欠けた」(ハリルホジッチ監督)点は修正しなければならない。

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