「香川と清武」。ふたりの共存はファーストチョイスになり得るのか?

2016年06月04日 広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

清武がスルーし、香川が冷静に決めたチーム3点目は――。

香川(中)のゴールを“お膳立て”した清武(13番)。同時先発起用されたふたりは、息の合ったコンビネーションで攻撃をリードした。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

[キリンカップ]日本代表7-2ブルガリア代表
6月3日/豊田スタジアム

 香川真司と清武弘嗣。
 
 自他ともに認める、抜群のコンビネーションを見せるふたりである。
 
 ただ、それぞれが「トップ下」を本職とするだけに、彼らの"共存"はレアケースのひとつでもあった。

 キリンカップのメンバー発表の席でも、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は清武について「シンジと競争してほしいです」と語っている。しかし一方で、こうも言っている。
 
「彼らがボールを奪うところ、ディシプリンを覚えれば、シンジと清武を同時に使いたい」
 
 指揮官が要求する守備のタスクを、ふたりはクリアしたのだろう。終わってみれば7-2で大勝したブルガリア戦のスタメンに香川と清武が名を連ね、前者はトップ下、後者は左ウイングで、キックオフを迎えた。
 
「試合に入る前から、『絶対に前半で取るぞ』という気持ちだったし、ふたりでそう話していた。それでシンジ君は2点を決めた」(清武)
 
 岡崎慎司のゴールで先制した日本はその後、長友佑都の高精度クロスを香川が完璧なタイミングでヘッドで合わせて、リードを広げる。そして――。

 チームにとっては3点目、香川にとってはこの日2点目となるゴールは、清武の"お膳立て"から生まれた。
 
 直接的なアシストではない。ただ、清武の献身性と閃きが相手DFを欺き、香川の卓越したテクニックが発揮されるシチュエーションを作った。
 
 右サイドから小林悠がグラウンダーのクロスを入れる。これにまず反応したのは、ペナルティアーク付近にいた清武だ。しかし、背番号13は自分の足もとに来たボールをスルー。後方には背番号10がスタンバイ。香川はゴールに背を向ける形で、受けたボールを右足の裏で転がしてDFを軽やかにかわし、左足で流し込んだ。
 
 祝福に近寄った清武が「よくやった」というふうに香川の頭に手を添えると、「サンキュー」という感じで、香川は清武の頬を軽く叩く。
 
「サイドで起点を作って、悠くんが粘って、キヨが潰れてくれてっていう、本当にみんなが絡んだ得点で、冷静にシュートを決められた」(香川)
 
 流れるような崩しで奪ったこのゴールは、香川と清武の共存が成立することを改めて証明する、美しい一撃だった。

次ページわずか44分間の競演だったが、その間に4つのゴールが生まれる。

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