じれったさを感じたオーストラリア戦。森保ジャパンに見られた後半の2つの大きな“変更点”は? ひとつは悲劇的な失点を招いた

2024年10月16日 清水英斗

前半はオーストラリアの掌の上

左サイドから果敢に仕掛けた三笘。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 日本代表は10月15日、ワールドカップ・アジア最終予選でオーストラリアと埼玉スタジアムで対戦。後半にオウンゴールで先制を許すも、オウンゴールで追いつき、1-1の引き分けに終わった。

 アジアカップの敗退以降、日本が磨いてきた3-4-2-1の布陣。攻守の肝になるスペースを初期配置で埋められる効果的なシステムだが、効果的なだけに動きにくい。今まではこのシステムのメリットが際立つ試合が多かったが、オーストラリア戦ではデメリットが露呈した。相手がそれを仕組んだ、とも言える。

 日本の3-4-2-1に対し、オーストラリアも同じ3-4-2-1で、鏡合わせのマッチアップとなった。数日前に戦ったサウジアラビアはあえて4-3-3でかみ合わせを外し、そのズレから攻撃を組み立ててきたが、オーストラリアはむしろ、かみ合った膠着を望んだ。クリンチして日本の得意な攻撃を封じ、ひたすら耐える。別にウソの痛がりで時間を浪費するわけでもなく、正当な方法で、オーストラリアは日本を泥沼に引きずり込んできた。

 キックオフ直後、重要なシーンがあった。日本の3バックのビルドアップに対し、オーストラリアは3枚の前線がプレスをかけて追い込んだ。堂安律が左足のワンタッチで前線に叩いたが、オーストラリアの出足が良く、ボールを回収されてしまう。

 すると、守田英正が動いた。谷口彰悟と板倉滉の間に下り、4枚回しに変形してビルドアップを行なうようになった。4枚に対して3枚のプレスでは追い込みきれないので、オーストラリアもそれ以上は来ない。5-2-3のハイプレスを止め、5-4-1のミドルブロックに移行した。
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 ここから、膠着が始まる。守田が下がるのは、相手のハイプレスをけん制するためであり、それ以上でもそれ以下でもない。中盤のビルドアップを考えれば、背後やライン間を取れる守田を最終ラインに下ろすのは、損失に他ならない。また、4枚回しに変形してサイドバック化した板倉も町田浩樹も、相手の両サイドハーフを引きつけたり、横を取ったり背後を取ったりしないため、後ろが重いだけになる。

 相手の両サイドハーフを困らせるアクションがなければ、オーストラリアのダブルボランチの両脇は、両サイドハーフにがっちり固められてしまう。そのため真ん中を通すパスコースを窺えず、スペースもないため、上田綺世や南野拓実らがボールを持つと、すぐに囲まれた。2シャドーに多くのスペースが与えられたサウジアラビア戦とは、様相が全く異なる。

 後ろが重くて加勢がなく、中も封じられたら、あとは必然、大外から個で攻めるしかない。ただし、三笘薫や久保建英のドリブルに対し、オーストラリアはわざと縦を空けていた。マイナス方向を切りながらドリブル応対し、クロスのコースを限定しながら、分厚く構えた中央ではね返す。これを徹底した。ポケットまで切り崩せば、大きなチャンスになるが、オーストラリアは左右のCBが鋭くカバーに目を光らせた。

 結局、前半の日本に得点の匂いが感じられたのは、カウンター、ロングボール、CKのサインプレー。前半はオーストラリアのポゼッションが不安定で、ボールをさらっと奪ってショートカウンターが何度も発動した。ロングボールも、相手は中盤を封じる代償としてラインを高く上げるので、早めにスペースに蹴るボールは有効だった。

 ただし、カウンターは偶発的、ロングボールは単発的だ。カウンターは主体的に繰り出せない。ロングボールはあまり増やすと支配力が弱まって疲労が増す。また、サインプレーは一度見せたら終わりで、15分の堂安のシーンは決まらなかった。

 日本にチャンスがなかったわけではない。だが主体性で言えば、オーストラリアの掌の上にある0-0。前半はそんな印象だった。
 

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