新たな“ネルシーニョチルドレン”の誕生。神戸・小林成豪に漂う飛躍の予感

2016年05月30日 本田健介(サッカーダイジェスト)

マークが甘いと感じていたCKから――。

Jリーグ初ゴールを奪うなどキレのある動きを見せた小林(写真中央)。チームに貴重な勝点1をもたらした。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

 リーグ戦2連敗中だった神戸は第1ステージ14節で大宮と対戦し、2点のビハインドを追い付き、2-2のドローで試合を終えた。
 
 アウェーで奪った貴重な勝点1。その立役者となったのが大卒ルーキーの小林成豪だ。この日、ピッチに立ったのは62分。チームが2点目を奪われた直後だった。
 
「ミーティングで確認したこと、特に守備面のところを意識して試合に入りました。(相手の)ボランチがSBのところに下がってきたら誰が行くのかなど、そういう決まりごとを明確にして、プレーしようと思っていました」
 
 まず守備を念頭にゲームに入ったという男は、しかし「相手DFがバテていて、集中力が切れていたので、フリーで受けられることが多かったです。チャンスをよく作れたと思います」と、徐々に攻撃にリズムを生み、カウンターのチャンスで先頭を切るその姿にチームメイトも感化されていった。そして――。
 
「ベンチで見ていた時は(大宮の守備が)まとまっていないなと感じていました。0-2になってから集中が切れたのかなと。CKの守備もタイトに付いていなかった。味方がノーマークになっているところもあったので、同点に持って行けるのかなと思っていました」
 
 その言葉通り、77分のCKのシーン、小林は味方をフリーにしようと相手選手を必死に身体で抑え、ふと頭を上げると、藤田からのクロスが目の前に飛び込んで来た。
 
「最初はボールを見ていなくて、味方のために相手をブロックしていて、(頭を上げるとボールが)目の前にありました。ビックリしましたが、フリーになっていたのであとは流し込むだけでした」
 
 小林の頭を経由したボールは静かにネットに吸い込まれる。一瞬、スタジアムはなにが起こったのか理解できず静寂に包まれ、直後に神戸サポーターの声援のボルテージが一気に増大した。
 
「(ゴールの感覚は)負けていたのであっさりという感じでした。自分自身が一番驚いていたと思います」
 
 あっさりと決まってしまったJリーグ初ゴール。しかし、このゴールで小林はさらに勢いに乗る。直後にはカウンターのチャンスで、レアンドロのワンタッチの落としを受けて大宮陣内を高速ドリブルで駆け抜け、その後も対面した大宮の左SBの和田をフェイントでかわしてCKを得た。
 
 この波に乗ってチームも84分のレアンドロのゴールで同点に追い付く。
 
「彼は良い入り方をしたと思います。チームにスピードを加えてくれました。大宮の和田君の対応が苦しくなったのが見て取れましたし、彼の上がりも抑えてくれた。よくやってくれたと思います」
 
 ネルシーニョ監督も賞賛する働きぶりだった。
 

次ページテクニックと高い戦術眼を備えるプレーぶりに期待は増す。

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