【柏】ディエゴ・オリヴェイラが備えるエースとしての資質

2016年05月21日 多田哲平(サッカーダイジェスト)

「ディエゴの個人技でのゴールが、チームに自信を与えた」(武富)

前線から精力的にチェイスするなど、献身的な一面も持ち併せる。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

 エースとしての資質とは――。
 
 J1第1ステージ13節の福岡戦。前半早々に先制点を挙げて勢いに乗った柏だったが、後半は一転、福岡の反撃に遭い逆転を許すまさかの展開に。あっという間の失点劇にスタジアムの雰囲気は沈み、敗戦ムードが漂っていた。何度も決定機を作れど決まらない――そんなジレンマも相まって、選手のプレーにも重苦しい感じが見て取れた。
 
 ところが80分に雰囲気は一変する。右サイドのセンターライン付近で相手のパスをカットした伊東がゴール前にパスを送る。待っていたD・オリヴェイラはそのボールをまたぎ、ワンフェイクでキム・ヒョヌンをかわし加速。そのまま左足を豪快に振り抜き、ネットを揺らした。

 この巧みな一発は、敗戦ムードを吹き飛ばすには十分だった。同点弾で調子を取り戻した柏はその後、終了間際に3点目を追加して勝ち切った。

 武富は、「追いつかれた時点で重さがあった。さらに逆転されて厳しかったけど、ディエゴの個人技でのゴールがチームに自信を与えたし、失いかけてた流れが取り戻せた」と2点目を振り返る。伊東のクロスに合わせた輪湖の決勝点も見事だったが、逆転への転機となったのは、このブラジル人FWの同点弾だろう。

 それでも、得点を決めた本人は至って冷静に振る舞う。
「結果的に輪湖が決めて勝利できたのは、自分が得点を決めたからではなく、チーム全員が非常にいい働きができたから」
 
 もともと純粋なストライカータイプではなく、開幕当初はチーム不調の影響もあり、ゴールを奪えずにいた。しかし、第1ステージ7節のG大阪戦での初ゴールを皮切りに、ここまでリーグ戦で4ゴール。初得点のG大阪戦から数えれば、6試合で4得点というハイペースで得点を重ねている。
 
 特筆すべきは、そのゴールに印象的なものが多いことだ。上体のフェイントのみで丹羽かわして決めたG大阪戦のゴールが象徴するように、独特のテンポで相手の逆を突き、豪快なシュートでネットを揺さぶるのがD・オリヴェイラの特長だ。

 そのテクニカルで豪胆なゴールでチームメイトに勇気を与える。チームに活力を与えるゴールを奪える勝負強さは、エースに求められる重要な資質のひとつだ。今節・福岡戦でのゴールは、その資質が備わっていることを証明するものだった。

 しかし、このブラジル人エースにも課題はある。「意味のある得点を決めて、自分が勝利に貢献できたことは嬉しく思っている。ただ、決定機で精度を高めていかないといけない」と語るように、福岡戦では、前半に迎えた3本の決定機をフイにして、流れを相手に渡す一因になった。
 
 フィニッシュの精度を高め、柏を再び連勝街道に導けるか。ブラジル人エースの働きが、チーム浮沈の鍵を握っている。
 
取材・文:多田哲平(サッカーダイジェスト編集部)
 
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