【EL】“敗軍の将”クロップが見つめる未来――いつか再びファイナルへ!

2016年05月19日 河治良幸

試合中、選手にやるべきことを“思い出させた”ドイツ人指揮官。

試合後、失意の選手たちを慰め、労をねぎらった。「この経験を糧にして、再び欧州の舞台に戻って来られるように」と語るクロップは、リバプールをいかなるチームに作り上げるか。 (C) Getty Images

「セビージャの1点目が大きかった。あれで、我々のサッカーも影響を受けてしまった」
 
 セビージャに1-3で敗れ、ヨーロッパリーグ(EL)の優勝タイトルを逃したリバプールのユルゲン・クロップ監督は、素直に負けを認めながらも、一瞬の隙を突かれたその失点に悔しさを露わにした。
 
 雨が降っては止み、また降り出すという落ち着かない天候のなかで、立ち上がりから激しいプレッシャーをかけてセビージャからボールを奪い、そこから果敢にDFラインを上げたリバプールは前半、完全に主導権を握った。
 
 ベンチでのクロップ監督の様は、テクニカルエリアから身振り手振りで具体的に指示するセビージャのエメリ監督とは対照的だった。
 
 腕を後ろに組んだままうろうろと歩き回り、攻守が切り替わるところ、中盤がボールを持ったところ、プレスが甘くなったところで、「早く戻れ」「ラインを上げろ」「もっと寄せろ」というジェスチャーで選手たちを鼓舞していた。
 
 12分、クラインの右からのクロスに合わせたFWスターリッジのヘッドをCBカリーソが辛うじてクリアしたシーンは、まさにクロップが声を張り上げてラインを上げるよう促し、ベンチから"右腕"ブバッチ・コーチも飛び出して大声で指示を送った矢先に訪れたものだった。
 
 よく、大きな試合では監督の指示はほとんど届かない、といわれるが、シンプルな意識付けの確認は比較的、伝えやすいものである。
 
 DFラインを上げることもそうだが、プレスバックが遅れたウイングの選手にやるべきことを"思い出させる"など、多少の効果は期待できる。そうしたやり方も、クロップ監督の持ち味だろう。
 
 自陣に引いていたジャンのロングフィードを起点に全体がぐっとラインを押し上げ、フィルミーノ、コウチーニョと繋ぎ、最後はスターリッジが左アウトサイドでの技ありシュートで先制ゴールを決めると、クロップ監督は右の握りこぶしを選手たちに向け、祝福した。
 
 ただ、ララーナの展開を経てクラインが右から上げた鋭いクロスが、飛び出したスターリッジがわずかに合わないなど、優勢に試合を進めた前半に幾つかチャンスを作りながらも追加点を取れなかったことが、後半に響いてしまったところもあるだろう。

次ページ2シーズン後、クロップの姿を欧州の舞台で見られるだろうか。

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