【鳥栖】“疑惑の判定”に揺れた一戦でエースとしての輝きを放った豊田。熊本への熱い想いも語る

2016年05月01日 本田健介(サッカーダイジェスト)

“疑惑の判定”に後味の悪さが残ったのは残念だったが……。

得点後、熊本へのメッセージが書かれた横断幕を掴んむパフォーマンスを見せた豊田。試合後には想いの丈を語った。(C) J.LEAGUE PHOTOS

 2-0で鳥栖が仙台に勝利したJ1の第1ステージ9節で"事件"は起こった。それは前半終了間際のことだった。左サイドからのクロスに鳥栖の豊田と仙台の石川直がヘディングで競り合う。両者がピッチ上にもつれて倒れ込んだ瞬間、池内明彦主審はPKスポットを指差し、石川直に2枚目のイエローカードとともにレッドカードを提示した。スタジアムは騒然とし、仙台イレブンはレフェリーのもとへ駆け寄る。
 
 映像を見返せば、石川直の手が豊田の身体にかかっているのが分かるが、ファウルかと問われれば疑問符が残る"疑惑の判定"だった。
 
 仙台の渡邉監督は試合後、「あのプレー以外にも我々としてみれば納得のいかないものが多々あった。クラブとして意見書を提出したいし、サッカーの向上を考えればきちんと検討したい」と強い口調でコメント。試合終了のホイッスルが鳴るとスタジアム中から大ブーイングがこだました。
 
 この試合は、熊本地震で甚大な被害を被った被災地に対して、強い想いを抱えるチーム同士の対戦だった。仙台は東日本大震災でのサポートの恩返へしと、義援金50万円を熊本に送り、精力的な募金活動を行い、対する鳥栖も同じ九州のチームとしてチーム一丸となって募金活動を行なってきた。
 
 鳥栖のサポーターが掲げた「被災地へ勇気を」という横断幕が両チームの共通する想いだったことは間違いない。
 
 両者が持てる力を出し合い、好勝負を演じる。そうすることで熊本へとパワーを送るはずだったのだ。それだけに"疑惑の判定"によって、スタジアム全体に不穏な空気が漂い、後味の悪さが残ってしまったのは残念で仕方なかった。
 
 ただ、この一戦に"彩り"がなかったわけではない。それは鳥栖のエース・豊田の眩い輝きだ。
 
 冒頭のPKのシーン、豊田は自らキッカーを務め、仙台サポーターのブーイングが鳴り響くなか、冷静にGKの逆を突いて先制ゴールを決めてみせた。
 
 そして圧巻だったのは56分の追加点――。
 

次ページゴール後は横断幕のもとへと駆け寄る。

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