【鹿島】熊本出身の植田が、こらえきれず試合後に涙。「熊本のみんなと戦っている気持ちでやっていた」

2016年04月16日 広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

スタンドを見渡せば、「九州に対する言葉」の横断幕。「サポーターの皆さんも、戦ってくれるんだというのは心強かった」。

恵まれたフィジカルを武器に、湘南の攻撃をシャットアウト。辛い気持ちを抑えてプレーに集中し、チームを勝利に導いた。写真:徳原隆元

 特別な想いで、植田直通は湘南との一戦に臨んでいた。
 
【PHOTOギャラリー|湘南 0-3 鹿島】

 14日夜に地元の熊本で震度7の揺れを観測する地震が発生。その後も余震が相次ぎ、各地で被害は広がっていった。
 
「朝からテレビを見ていて、ずっと熊本のニュースが流れている。親とかは無事でしたけど、亡くなっている方がたくさんいる。すごく辛い気持ちだった」
 
 試合に向けては、「絶対に勝ってやろう」という意気込みでピッチに立ち、CBとして湘南の攻撃をシャットアウト。マッチアップしたキリノを迫力あるディフェンスで押さえ込み、3-0の完封勝利に大きく貢献した。
 
 そのパフォーマンスは際立っていたが、「僕だけじゃなく、みんなで守り切った。前線の選手にも感謝したいし、これを続けてしっかりと無失点でいければいい」と謙虚にチームメイトの奮闘を称えた。
 
「僕にはサッカーしかない」とプレーに集中した。それでも、心のどこかで熊本のことが気になっていたかもしれない。しかし、ふと周りを見渡せば、力が漲ってきた。
 
「鹿島もそうですし、湘南のほうも、横断幕というか、九州に対する言葉もあった。それを見てグッとくるものがありました。僕だけが戦っているのではなくて、サポーターの皆さんも戦ってくれるんだというのは心強かった」
 
 試合後のインタビューでは、こらえきれず涙があふれてきた。
 
「ちょっと無理でした。やっぱり(熊本は)育ったところなので。今まで見てきたところが、大変なことになっていて、衝撃を受けた」
 
 本当なら、一刻も早く熊本に返り、「僕にできることがあれば、なんでもやりたい」。しかし、植田はサッカー選手として、地元に全身全霊でエールを送った。
 
「熊本のみんなと戦っている気持ちでやっていた。しっかりと結果が出たので、それがたくさんの人に伝わって、元気を出してくれればいいなと思います」
 
 今すぐに熊本に帰ることはできないが、「困っている人がいれば、絶対に助けたい」と、なにかしらの形で支援をするつもりでいる。
 

次ページ盤石の守備力をベースに川崎を追走。昌子とのCBコンビはJ屈指。

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