どうした青森山田!? 選手権優勝から3か月半、サニックス杯でまさかの7位。佐賀東戦で指揮官が雷を落とす。いったい何があったのか

2024年03月24日 松尾祐希

選手たちはベンチ前に集められ――

選手権覇者の青森山田は、サニックス杯で優勝を狙うも7位でフィニッシュ。持ち前の勝負強さを示せなかった。写真:松尾祐希

 今から3か月半前。青森山田は国立競技場で歓喜の瞬間を迎えていた。

 昨年12月のU-18高円宮杯プレミアリーグに続く、日本一のタイトル。黒田剛前監督(現・町田監督)からバトンを受けた正木昌宣監督のもとで初めて選手権優勝を勝ち取り、"青森山田の強さは不変"であることを示した。

 そして、時は経って3月半ば。チームは新たなスタートを切り、新シーズンに向けて各地のフェスティバルを転戦する時期を迎えた。しかし、状態は決して良くない。勝ったり、負けたり、この時期は不安定な戦いが続くもので、日本一を掴んだ昨季もシーズン前は多くの問題点を抱えていた。ただ、今年はそれ以上に厳しい状況に置かれている。

 1月下旬の東北新人戦は準決勝で尚志に敗北。延長戦までもつれた試合を1-2で落とし、2年ぶりの優勝を逃した。以降は雪の青森で例年通り、雪中サッカーなどで体力強化を進め、尻上がりに状態を上げていく算段を立てていた。

 だからこそ、今回のサニックス杯では青森山田らしい"ゴールを隠す守備"と"一本中の一本を決め切る強さ"を示したかった。だが――。

 結果は16チーム中7位。「この大会には優勝がしたくてきた」という正木監督の言葉とは裏腹に、4チームで争われたグループステージは2勝(うちPK勝が1つ)1敗の2位でタイトルの可能性が潰えて、5位~8位トーナメントに挑む形になった。

「(予選で対戦した)ガンバ大阪ユースとの試合もそうだけど、決め切る、守り切るところが一歩足りていなかった感じがする。内容は悪くないけど、勝てなかったというゲームが一番こちらとしては厳しい。内容が悪くてもいいからある程度、勝ち切って、どんどんチーム力を上げていく流れを作ってほしいので」
 
 新人戦の時期と比べれば、チームは格段にレベルアップしている。球際で戦う姿勢、ゴールを守り抜く力や点を奪い切る力は高まってきた。しかし、小さな差が最終的には大きな歪みに。1位通過を賭けて臨んだG大阪ユースとのグループステージ最終戦は0-4の大敗を喫するなど、"らしくない"結果に終わった。

 選手たちも危機感を覚えていたが、そうした流れは簡単には断ち切れない。

 迎えた5位~8位トーナメントの1回戦。同じプレミアリーグ勢のサガン鳥栖U-18と対戦したが、試合前に指揮官から雷が落とされた。整列が終わり、円陣を組むタイミングの時だ。鳥栖の選手たちは自陣の中央で輪になっていたのだが、青森山田の選手たちはベンチ前に集められていた。先発メンバーだけではなく、控えメンバーも一緒になって正木監督の周りに並ぶと、厳しい言葉が掛けられた。

「お前たち、こんなアップで試合の入りから100パーセントでいけるの?」

 いった何が起こっていたのか。正木監督は言う。

「鳥栖戦はウォーミングアップの時点から全然ダメ。前日のゲームでガンバ大阪に負けたことで目標設定が優勝から変わり、別のところに向かう必要が出た。でも、やり切れていなかったし、準備の段階で(ちゃんとできていれば)あんなことはしない。なので、試合前に指示は出さず、心の部分だけを解いた」

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