【スペイン代表】熾烈さを増す23人枠を巡るサバイバル。注目はベテランFWアドゥリスの充実ぶりが光る「9番争い」だ

2016年03月30日 豊福晋

4人がCFの3つの椅子を争う構図に。

イタリア戦では味方のシュートのこぼれ球に鋭く反応し、同点弾を奪取。持ち味の嗅覚を発揮して評価を高めたアドゥリス(中央)が、一躍CFの序列の2番手に。(C)Getty Images

 3月の国際Aマッチデーでイタリア、ルーマニアと対戦したスペイン。その両ゲームで目立ったのは、不甲斐ない内容だった。

 イタリア戦では終始相手にペースを握られた。1-1の引き分けに持ち込みはしたものの、得点シーンは直前のプレーが明らかにオフサイドだ。CBのジェラール・ピケを除いて大きく先発メンバーを入れ替えて臨んだルーマニア戦も、内容面の改善は見られずスコアレスドロー。テストマッチとはいえ不安が募る結果に終わり、スペイン国内では批判が相次いだ。

 低調の最大の理由は、セルヒオ・ブスケッツとアンドレス・イニエスタの欠場(怪我の影響で招集を辞退)にある。

 ビセンテ・デル・ボスケ監督が「ブスケッツとイニエスタがいれば内容面も変わるはず」と、試合後に珍しく個人名を出してその実力を称えたように、現在のチームは間違いなくふたりが中心を担っている。

 この180分間でもっとも評価を高めたのが試合に出ていない彼らだったのは、なんとも皮肉である。

 もっとも、株を上げた選手もいる。戦前からとくに注目を浴びていた"35歳のテスト生"アリツ・アドゥリスである。

 イタリア戦で1得点と結果を出したこのCFの出来は、評価に値する。現在の陣容がほぼ固まってから初めてチームに加わった(2010年10月以来の代表戦)にもかかわらず、それを感じさせないプレーで持ち味を発揮した。多くのクラブを渡り歩いてきたベテランだからこそなせる業だろう。

 所属するアスレティック・ビルバオでプレーする時のような絶対的な存在感までは、見せられなかった。それでも、前線左に張るアルバロ・モラタとのコンビでも十分に機能することを証明し、指揮官から「アドゥリスはこのチームのスタイルにハマった」と合格点を与えられた。

 これにより面白くなってきたのが「9番争い」。EURO2016のメンバー入りを懸けたCFのサバイバルである。

 スペインのCFの想定枠は3。現在はモラタ、アドゥリス、パコ・アルカセル、そしてジエゴ・コスタの4人がその3つの椅子を争う構図だ。このなかで当確と言えるのが、CFと左ウイングのどちらにも対応するモラタ。そして3月の2試合で、彼に次ぐ位置を確保したのがアドゥリスである。

 ルーマニア戦で先発したアルカセルは、ふたりに匹敵するパフォーマンスを披露できなかった。ペナルティーエリア内での得点感覚で勝負する彼は、他の3人とはやや毛色が違う。スペイン本来の中盤を支配して攻め続ける展開のなかでは機能するものの、今回はチャンス自体が少なく、持ち味を発揮できなかったようだ。

 デル・ボスケが以前から高く評価してきたジエゴ・コスタは、コンディションさえ良ければ当確だろう。しかし現在は100パーセントの状態にはほど遠く、アルカセルと3番手を争っている。
 

次ページ中盤は複数の有力候補が不完全燃焼に終わる。

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