「理解に苦しむ」「選手時代の面影はない」 “奥の手”を発動したシャビ監督をバルサ番記者が指弾「もっと特別扱いされるのを望んでいたのだろう」【現地発コラム】

2024年03月03日 エル・パイス紙

シャビの要求を実現するのは簡単なことではない

今季限りでの退任を発表したシャビ監督。(C)Getty Images

 シャビが正真正銘のバルセロニスタであり、パスサッカーを極めタイトルを獲得することで世界の頂点に立ったチームの中心選手にしてキャプテンであり、ウェンブリーのような聖地の主人公であることに異論を唱える者はいない。

 現役時代のポジションはセントラルMFではなく、インサイドハーフで、バルセロナとスペイン代表の攻撃を操った。また、リオネル・メッシの周辺やジョゼ・モウリーニョ監督時代のレアル・マドリーとの間で騒動が生じたときには、仲裁役を買って出るだけのパーソナリティも持ち合わせていた。ジローナの監督、ミチェルは、「シャビはバルサそのもの」と評している。

 したがっ て、ジョアン・ラポルタ会長が監督としての経験がアル・サッドに限定されていたことを懸念していたにせよ、解任したロナルド・クーマンの後任として招聘したことは驚きではない。シャビほどバルサを知り尽くした候補者は他にいなかった。
 
 中間層が少ないチームの歪な編成やクラブの危機的な財政状況が助けになることはなかったが、だからこそファンは、火中の栗を拾った彼の勇気と野心に感謝した。監督交代を境に息を吹き返したバルサはチャンピオンズリーグ(CL)の出場権を獲得した。

 しかしその後、シャビは最大の難問に直面した。欧州最高峰の大会に見合った競争力のあるチームを作ることだ。もっともその挑戦はあくまでサッカーの範疇であり、クラブの組織的、社会的な問題とは関係はなかった。それはシャビが現役時代にバルサ特有のエントルノと呼ばれる複雑な環境がもたらす自滅癖に対する免疫を十分に得ていたと考えられていたからでもある。

 しかしその骨の髄までバルサの人間であるシャビが来年6月の契約満了を待たずに今シーズン限りで退任することを発表したことの理由を、クラブの内外、とりわけメディアからの風当たりの強さに求めている。理解に苦しむというほかない。

 レアル・マドリーやジローナに完敗を喫するなど、どうしようもない状況に追い込まれていたことによる個人的な理由と言ってくれたほうがよっぽど納得がいく。シャビはおそらくもっと特別扱いされることを望んでいたのだろう。周りからのリスペクトを再三要求していたことからもそれは明らかだ。

 そもそもシャビの要求を実現するのは簡単なことではない。なぜなら、前述した通り、彼の認識とは異なり、議論の発端となっているのは、サッカー的なものだからだ。試合中の采配にも改善の余地がある。
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