【日本代表】「正直僕が一番戸惑っていた」――新システムに埋没した柏木陽介。しかし“幅”を広げるためのチャレンジは失敗ではない

2016年03月25日 本田健介(サッカーダイジェスト)

前日の熱い想いとは裏腹に……。

不慣れなポジションに苦しんだ柏木。試行錯誤が続いた。写真:茂木あきら( サッカーダイジェスト写真部)

「パスでチームを動かしたい」
 
 アフガニスタン戦前日、そう語る柏木の目には力強い光が宿っていた。しかし中盤をダイヤモンド型にした4-4-2で本番へ臨んだなか、柏木は予想外の苦戦を強いられた。
 
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 慣れ親しんだボランチではなく、中盤の左サイドで先発すると、「正直僕が一番戸惑っていた。ひとつのオプションとなる形を試したが、僕じゃないほうが上手くいったのかなという想いもある」と、ぎこちなさを露呈。当初思い描いていたパスでリズムを作る仕事は果たせずに「サイドに流れることは自分のサッカー人生でほぼなかった」と、手探り状態でのプレーが続いた。
 
 それでも苦境を打破しようとする想いは行動に表われた。28分、相手選手の負傷で試合が一時中断すると「ハセ(長谷部)さんが集めた」という、センターサークル付近での"緊急ミーティング"で、中心となり「落ち着いてやろうと。前半我慢すれば、相手は後半落ちてくる」と確認し合ったと話す。
 
 直後には左SBの長友とともにハリルホジッチ監督に呼ばれ、「ポジショニングを指示されました。あのフォーメーションは俺や(原口)元気がボールをもらってアーリー(クロス)を入れることを狙いとしている。そこを意識するようにした」と語る。
 
 目に見える結果は残せなかったが、後半立ち上がりには華麗なパスワークの中心になるなど、徐々に持ち味を発揮。64分にピッチを去るまで、精一杯のパフォーマンスを披露した。
 
 本来は「4-3-3のインサイドハーフが一番、合っていると思う」と語るように、中央でのプレーを得意とする。しかし、サイドという新境地は個人にとって、そしてチームにとっても"幅"を広げる良いチャレンジになったはずだ。
 
 新たな司令塔候補は続くシリア戦(3月29日)へ静かに牙を研いでいる。アフガニスタン戦の悔しさを晴らすために真骨頂のパスセンスを見せつけられるか、活躍に期待したい。
 
取材・文:本田健介(サッカーダイジェスト編集部)
 
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