【浦和】古巣との初対戦で快勝。「違和感があった」遠藤航が指摘した湘南の課題、掴んだ確かな手応え

2016年03月21日 塚越 始(サッカーダイジェスト)

「僕らの出来うんぬんではなく、相手の運動量が落ちていった」

セットプレー時のゴール前での混戦。遠藤(6番)は強靭なフィジカルを活かして、相手の攻撃を確実にはね返し続けた。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

 湘南のサポーターに、遠藤航は温かく迎えられた。
 
 試合前のメンバー発表でその名前がアナウンスされた際、それに試合後に本人が場内を一周してサポーターにあいさつをした際、いずれもたくさんの拍手がスタンドから起きた(もちろんとも言えるが、ブーイングをする人もいた)。
 
 遠藤にとって、初めての古巣の湘南との対戦。しかも、湘南ユース時代に2種登録選手としてJ1デビューを飾った2010年から昨季までの6年間(10年は2種登録選手としてプレー)、"ホーム"として慣れ親しんだスタジアムに乗り込んで来たのだ。
 
 これまでとは異なるアウェー側のロッカーに入り、昨季までとは反対のゴールがあるピッチでウォーミングアップをした。湘南サポーターの歓待も、それはそれでアウェーならでは――お客さん扱いだったと言えた。
 
 遠藤は言う。
 
「違和感はあった。でも試合になれば、意識せずにできた」
 
 赤いユニホームを着た遠藤は試合開始のホイッスルが鳴った瞬間、今度は "なんの違和感もなく"浦和の一員として、彼らしいクールに身体を張った守備でことごとくピンチの芽を摘んでいった。遠藤より身長が8㌢高いCFの藤田祥に空中戦で競り勝ち起点を作らせない。中央に飛び込んできた高山、下田のシャドーにも素早いチェックを見せた。
 
 ボールを奪ったあとは、最終ラインからできるだけ高い位置までボールを持ち上がってパスをつなげた。コンパクトな陣形を保ってボールを奪う位置を絞り込むこと、よりゴールを意識したプレーを選択しやすくすることなど……、遠藤の少しでも前へ向かう姿勢は、浦和に様々な相乗効果をもたらしていた。
 
「切り替えの早さと球際の強さは出せたと思う。ラッキーな形で1点目を奪えたあと、少しずつ主導権を握ることができた」
 
 そう語る遠藤が3バックの中央(リベロ)に固定されて、2失点を喫した広州恒大戦を挟んで、Jリーグでは2試合連続完封勝利を飾った。湘南戦のピンチと言えたのは試合終了間際に神谷にシュートを放たれたぐらいで、守備の組織が崩されることは一度もなかった。
 
 その「決定機ゼロ」に抑えられた要因として、遠藤は「経験」というアドバンテージを挙げた。
 
「(湘南は)『前』に向かう意識を持っているので、そこで負けないこと、それにカウンターに持ち込まれないように心掛けた。『こういう時は、こう来るのかな』という予想は立てやすかった。自分ができることを、しっかり出せたと思う」
 
 さらに、湘南のパフォーマンスに助けられた面もあったと明かす。
 
「最初は勢いがあったけれども、途中からスピードがなくなった。(後半一方的に浦和が主導権を握れたのは)僕らの出来うんぬんではなく、相手の運動量が落ちていったからだと言えた」
 
 湘南が自滅したようだった――。
 

次ページ中3日の3連戦でリベロとして全試合フル出場を遂げ、レギュラーとしてプレーする自信を深められたのでは。

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