初出場でベスト8のサプライズ! 名古屋の躍進を支えた大久保コーチ、注ぎ込んだ“青森山田イズム”「やっぱりまずは戦うことが大事」【選手権】

2024年01月05日 森田将義

町田・黒田監督の活躍も自信に

21年度から名古屋で指導する大久保コーチ。写真:永島裕基

[高校選手権 準々決勝]市立船橋(千葉)2-1 名古屋(愛知)/1月4日/柏の葉

 初めての選手権に挑んだ名古屋は二度のPK戦をものにし、ベスト8まで進出。準々決勝でも、5度の日本一を誇る市立船橋を相手に先制点を許しながら、同点に追いつくなど善戦を繰り広げた。今大会のサプライズとも言える新興勢力の躍進は、青森山田でGKコーチを長年務めた大久保隆一郎氏の存在抜きでは語れない。

 2度目の日本一となった2018年度限りで母校・青森山田を離れ、名古屋産業大のGKコーチ兼スカウトに就任。同時期に星稜の河﨑護前監督の紹介で出会ったのが名古屋だった。「高校サッカーと大学サッカーを同時にやりたいという想いが強かったので、一緒にやろうと声を掛けた」(山田武久監督)ことで、21年度から定期的に指導するようになったという。

 高校生を指導する経験はあったが、全国からサッカーで名を揚げたい選手が集まってきた青森山田とは勝手が違う。県内屈指の進学校であるため、推薦で獲得できる選手は限られている。「みんな自宅生。自宅生とか寮生といった言葉は愛知県にない。親が作ってくれるご飯を食べながら、電車で1時間半かけて来て、トレーニングしている」(大久保コーチ)ことも大きな違いだ。

 チームに加わった当初は選手の意識が決して高いとは言えず、練習の取り組む姿勢に衝撃を受けたという。選手に目標を尋ねると「愛知県チャンピオンになりたい」と返ってくるが、大久保コーチの目から見ると、その基準には達していない。
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 ただ、「彼らは賢いのでミーティングで言ったことが頭に全部入っている。これをやったら強くなると自分たちが思った時には徹底してやってくれる」(大久保コーチ)ため、どうして今のままでは無理なのか頭ごなしにではなく、丁寧に伝えた結果、徐々に練習の雰囲気が締まっていったという。

「大久保さんが来てから、ピリピリした良い緊張感を持って1回の練習に挑めている。空気感がだいぶ変わってきた」と口にするのはGK小林航大(3年)だ。

 常勝軍団で培った経験も余すことなく選手に伝えた。大久保コーチはこう話す。

「フォーメーションがどうとか、誰が出てきて何かを実行するとか、そんなのではなく、やっぱりまずは戦うことが大事。青森山田はベースの基準が高かった。黒田(剛)前監督が(FC町田)ゼルビアでも活躍し、"やっぱりこれでしょ"と僕も自信になったし、それを伝える義務があった。選手にもやりたいサッカーと勝てるサッカーは違うと伝えてきた」
 

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