なぜブラジルの“18歳逸材”ヴィトール・ロッキはバルサに前倒し加入したのか。番記者が明かすチーム事情とリアルな評価【現地発】

2024年01月04日 エル・パイス紙

ロナウドのバルサ時代を彷彿させるとも

逸材ヴィトール・ロッキの加入がバルサの起爆剤となるか。(C)Getty Images

 逸材ヴィトール・ロッキは、セレブのようにバルセロナに到着した。

 ブラジルを出発して以来、その一挙手一投足が連日メディアで報道され、ブラジル代表の一員としてモロッコとの親善試合に30分しか出場していないことを考えれば、その扱いは驚きさえ覚える。しかし、希望を与える選手を必要としているバルセロナにおいては、彼のような18歳の若者も救世主のように歓迎される。

 お金と若さは、モンジュイックのような丘さえ動かすことができる。バルサは、2024年夏の予定だったロッキの加入を1月に前倒しした。当面は、11月のスペイン対ジョージア戦で負傷したガビに代わるMFの獲得を後回しにして、ロッキに期待をかける。

 シャビ監督が「チームに希望、ハードワーク、ゴール、自己犠牲の精神を与えてくれる」と評価するロッキは、アトレチコ・パラナエンセで81試合に出場し、28ゴール・11アシストを記録。昨年9月にインテルナシオナル戦で負傷していなければ、得点数はもっと増えていただろう。アメリカ・ミネイロのアカデミーで本格的にサッカーをスタート。1年間、クルゼイロでプレーした後、2022年にアトレチコ・パラナンセに加入した
 
 あるアナリストは、スペースをアタックする爆発的なスプリントがそのクルゼイロの筆頭株主を務めるロナウドのバルサ時代を彷彿させると指摘する。

 昨シーズン、サモーラ賞、ピチーチ賞をそれぞれ受賞したテア・シュテーゲンとレバンドフスキが牽引車となってラ・リーガを制覇したバルサは、今シーズンは一転してその武器にしていたゴール前での攻防戦で苦しんでいる。

 ましてや現在、テア・シュテーゲンが戦線離脱中。レバンドフスキは得点ペースの低下に歯止めをかけることができない。バルサイズムをピッチ上で体現しようと模索するシャビが率いるチームにおいて、昨シーズンの戦い方は応急処置的なものだったのかもしれない。

 現状は攻撃の停滞よりも守備での惨状(今シーズン、リーグ戦18試合を消化し、失点数は昨シーズンの20を上回るすでに21)のほうがはるかに懸念される。そのうえ、1ゴールを決めるのに9本ものシュートを必要とし、9月19日にチャンピオンズリーグにおいてアントワープを5-0で粉砕して以来、2ゴール以上の差をつけて勝利した試合がないのは驚くべきことだ。
 

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