「ジャンケンで決めた」緊迫した場面で直接FKの権利を得て鮮やかにゲット! 明秀日立のエース石橋鞘は夏冬連覇の“水先案内人”となれるか【選手権】

2023年12月29日 松尾祐希

公式戦で初めて決めた直接FK。それでも「選手権はやっぱり甘くない」

夏の王者の前線で躍動する石橋(11番)。自慢の左足でものの見事に直接FKをねじ込んだ。写真:滝川敏之

[高校選手権1回戦]明秀日立(茨城) 2-0 徳島市立(徳島)/12月29日/等々力

 エースとして絶対に譲れなかった。

 明秀日立の1-0で迎えた後半26分。ゴールから20メートルあたりの位置でFKを得ると、FW石橋鞘(3年)の気持ちは固まっていた。
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「根岸がゴールを決めたので、自分もと思っていた。前の決定機を逃していたので、今日は自分じゃないのかなって思っていたけど、FKのチャンスは逃したくなかったんです」

 そう強く誓った石橋は、途中出場ながらすでに1ゴールを奪っていた10番のFW根岸隼(3年)に自身の想いを伝え、ある方法でキッカーを決めたいと申し出たという。

「根岸と手の動きを隠しながらジャンケンをしたんです」

 見事に勝利して権利を得た石橋は左利きのMF斉藤生樹(3年)をダミーとして立たせ、ボールをセットする。斉藤がフェイクを入れて相手GKの重心がニアサイドに傾いた瞬間、ファーサイドにアウトスイングのボールを右足で蹴り込んだ。

「GKと壁の位置を見た時に、壁に背が高い選手が多かったので壁を越すのは難しい。逆にGKは自分から見て右寄りにポジションを取っていて、ファーサイドのコースをあまり消しているような感じには見えなかった」

 冷静にコースを射抜き、歓喜の瞬間を迎えた。

 公式戦で初めて決めた直接FKは値千金の追加点。「1-0になったあと、クロスから決定的なチャンスが巡ってきたけど、決め切れなかった。やっぱり選手権は甘くない」と振り返った通り、直前に好機をフイにしたとあって喜びはひとしおだった。
 
「実はゴールが入る直前にベンチで次の交代は石橋かなと話していたんです。その直前にあったヘディングシュートを決めていれば、お役御免かなと思っていたんですけど、決められなかったのでもう少しだけ引っ張ったんです」

 チームを率いる萬場努監督は裏話を交えつつ、石橋の成長ぶりについてこう話す。

「FKは持っている。そして、アタッキングサードのところでのクオリティーも上がってきた」

 元々、主戦場はサイドハーフ。今年は高い位置からの守備を期待され、トップ下のポジションにコンバートされた。最初は守備で頑張れても攻撃面で思うように結果を残せなかったが、インターハイで自信を深めて成長のスピードが加速した。

 初戦で弾みをつけるゴールを決めた石橋。4歳上の兄も明秀日立の出身で、2年時に選手権出場を果たしているが、2回戰で敗退した過去がある。今度は自分の番だという想いも含め、冬の日本一を目ざす戦いはまだ始まったばかりだ。

「今日のゴールで自信がついた」という明秀日立のゴールゲッターは、夏のインターハイに続く全国制覇を期し、最後の冬を戦い抜く。

取材・文●松尾祐希

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