岩政体制で再認識、“常勝軍団”復活は一足飛びに叶わない。過去7年間で5人の監督。理想と現実にどう折り合いをつけていくか

2023年12月07日 元川悦子

だったら、選手にお金をかけたら?

岩政体制は1年半で終焉。誰よりも鹿島愛が強かった若き指揮官が取り組んだことを、今後に活かしたい。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 12月4日に岩政大樹監督の退任が正式発表され、鹿島アントラーズは2024年から新たな体制へと移行することになった。

 一部報道では、欧州で指導経験のある外国人監督を招聘すべく動いているとのことだが、円安の今、日本サッカー界にとって海外から人材を呼ぶハードルは高い。1人の年俸のみならず、コーチングスタッフや通訳、家族のサポートなどコストは増大する。「だったら、選手にお金をかけたらどうか」といった意見が出てくるのも理解できる。

 吉岡宗重フットボールダイレクターは3日の横浜FC戦後、鈴木優磨以外の点取り屋がいなかった点を指摘され、「バジェットの中でやらないといけない。勝負に出るところは出るというバランスを考えた編成だった。おっしゃる通り、鈴木優磨以外の得点源は必要。ただ、彼以外のフォワードはいる。彼らに期待していた部分もあるが、組織として上手く点を取る形を作りたかった」と発言。FWの人材不足よりも、点を取る形を作れなかった岩政監督ら現場スタッフの力不足が大きかったと見ているようだった。

 けれども、限られた予算の中で選手に思い切った投資ができていれば、大迫勇也(神戸)、アンデルソン・ロペス(横浜)に続くレベルのタレントを獲得できた可能性もあったのではないか。そこまでのトップFWでなくても、環境を変えて結果を出した浅野雄也(札幌)や豊川雄太(京都)のような人材を探して補強する手もあっただろう。

「今年は守備の部分はある程度、成果が出たが、得点の部分で大きな課題を残したシーズンだった」と吉岡FDは指摘しているのだから、前線の選手層を厚くしていたら、もう少し勝点を上積みできた可能性は少なくない。
 
 そのあたりのチーム編成に関しては、やはり強化部によるところが大だ。近年の鹿島は外国人を含めて獲得した選手が十分に力を発揮できていないケースも目立つ。監督交代という大ナタを振るうだけでなく、強化部自体もここまでの取り組みを検証し、変えるべき部分は変えていかないと、常勝軍団復活への道はさらに険しくなると言うしかない。

 鹿島が7年間、国内タイトルから遠ざかっているうちに、高校・大学のトップ選手が鹿島をファーストチョイスにしなくなったという厳しい現実も直視しなければならない点だ。

 松村優太(←静岡学園高)、荒木遼太郎(←東福岡高)、染野唯月(←尚志高)が加入した2020年までは、まだ各年代のトップ選手が来ていたが、それ以降は超一流の人材加入が徐々に減っているように映る。

 神村学園高の吉永夢希が卒業後にヘンクへ、明治大の佐藤恵允がブレーメンに移籍と、今や海外へダイレクトに行ってしまう時代だ。「優れた才能を大きく伸ばして、チームの主軸に据える」という鹿島が長年やってきた手法は難しくなっているのが事実と言える。

 そういった現状だけに、鹿島の戦い方に合った選手を厳選して連れてくるといったスカウティングの再構築も進めていく必要がありそうだ。過去7年間で5人も監督が入れ替わり、チームのスタイルを確立しきれない状況では、なかなか好人材も集まりにくい。アカデミーからの引き上げも含め、見直さなければいけない部分は少なくない。

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