【移籍専門記者】一筋縄ではいかない「C・ロナウドの移籍」。ただ、新天地となりうるのは1つだけだ

2016年03月02日 ジャンルカ・ディ・マルツィオ

ペレスはC・ロナウドを子飼いだと思ったことが一度もない。

2月21日のマドリード・ダービー後には、「もし全員(のフィジカル)が自分と同じレベルだったら、いまごろ1位だ」とチームメイトを批判するようなコメントを残して物議を醸したC・ロナウド。はたして今夏の去就は?(C)Getty Images

 昨夏、パリ・サンジェルマンがクリスチアーノ・ロナウド獲得に本腰を入れ、2200万ユーロ(約31億円)という破格の年俸を提示したのは周知の事実。年明けまでは、パリSGは今夏に再挑戦すると誰もが信じていた。
 
 しかしその後、マドリーが18歳未満の外国籍選手の獲得に関する規約違反により、FIFAから移籍禁止処分(16年夏と17年冬の2回)を下されると動きはなくなり、以降、何の情報も伝わってきていない。
 
 マドリーに対する処分はいまのところ保留となっているが、この夏にどんな状況になっているか、現時点では不透明だ。たとえ売却して巨額の移籍金を手に入れるチャンスが巡ってきても、後釜が確保できないような状況下でC・ロナウドを手放すのは、マドリーにとってはリスクが高すぎる。このレベルの選手を移籍させるには、周到な準備が必要なのだ。クラブを取り巻くいまの状況を考えると、そう簡単には事が運びそうにない。
 
 ただ、C・ロナウドとマドリーのフロレンティーノ・ペレス会長との関係はかつてないほど冷え切っている。すべてをペレス自身が決められるのであれば、C・ロナウドは間違いなくメルカートに出されるだろう。
 
 そもそもペレスは、C・ロナウドを自分が目をかけて獲得した子飼いだと思ったことが、ガレス・ベイルと違って一度もない。ペレスが二度目の会長就任を果たした2009年夏に、C・ロナウドはマンチェスター・ユナイテッドからマドリーに移籍したが、会長選挙前に移籍交渉は事実上締結されていたのだ。
 
 そして、もし売却して大きな利益を上げようとするのであれば、契約満了2年前の今夏が最後のチャンスなのは明白だ。しかも手放せば、ベイルとの間に生じている戦術的な問題やロッカールーム内での反目も解消できる。
 
 マドリーの移籍禁止処分が先送りか撤回にになって、万が一、C・ロナウドが退団する運びとなれば、新天地となりえるのは資金力から見てパリSGだけだろう。
 
 同じく代理人ジュルジュ・メンデスの顧客であるジョゼ・モウリーニョが、自身が就任するであろうマンチェスター・ユナイテッドに呼び寄せるというシナリオも考えられなくはない。C・ロナウドは自らをスターに育ててくれた"第二の故郷"へ、感動的な帰還を果たすことになる。
 
 ただ、両者の関係はモウリーニョのマドリー・ラストシーズンにややこじれている。実現の可能性が高いとは言えない。
 
文:ジャンルカ・ディ・マルツィオ
翻訳:片野道郎
 
※『ワールドサッカーダイジェスト』2016.03.03号より加筆・修正。
 
【著者プロフィール】
Gianluca DI MARZIO(ジャンルカ・ディ・マルツィオ)/1974年3月28日、ナポリ近郊の町に生まれる。パドバ大学在学中の94年に地元のTV局でキャリアをスタートし、2004年から『スカイ・イタリア』に所属する。元プロ監督で現コメンテーターの父ジャンニを通して得た人脈を活かして幅広いネットワークを築き、移籍マーケットの専門記者という独自のフィールドを開拓。この分野ではイタリアの第一人者で、2013年1月にグアルディオラのバイエルン入りをスクープしてからは、他の欧州諸国でも注目を集めている。
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