【ビッグクラブの回顧録】“あの時”のユナイテッドを振り返る vol.13~2002-03シーズン ~

2016年02月29日 サッカーダイジェストWeb編集部

絶望的な状況からの王座奪還を可能にした堅守のフットボール。

前シーズンに続き、英国史上最高額の移籍金でリオ・ファーディナンドを獲得。ユナイテッドは2シーズン続けて国内史上最高額で大物を釣り上げた。 (C) Getty Images

 2001-02シーズン終了後の退任を明言していたアレックス・ファーガソンだったが、無冠に終わったこともあって、これを撤回。名伯楽は第2次黄金時代を築くべく、前シーズンに続いて大胆なチーム改造に着手した。
 
 補強の目玉となったのは、CBのリオ・ファーディナンド。無茶な巨額投資が祟って経営が傾いていたリーズから、3450万ポンド(約58億6500万円)で獲得。前年のファン・セバスティアン・ヴェロンに続き、2シーズン連続で英国史上最高額の移籍金を投資したのである。
 
 しかし、プレミアリーグ序盤戦では勝星に恵まれず、9月には実力で勝るボルトン、リーズに連敗し、さらに11月のマンチェスター・シティとのダービーマッチでも1-3と完敗……。引き分けも続くなど安定感を欠き、我慢の日々が続いた。
 
 そんな苦境のなかでも、ファーディナンドという柱が立った最終ラインだけは安定。ロラン・ブランに衰えが見え始める一方で、ジョン・オシェイとウェズ・ブラウンが成長し、ファビアン・バルテス、ロイ・キャロルのGK2人も存在感を誇示するなど、リーグ最少の34失点と、シーズンを通して堅守を誇った。
 
 この守備陣の奮闘に触発されたのか、序盤戦は精彩を欠いた攻撃陣も後半戦に入ると本来の輝きを取り戻し、チームにも光明が差し始める。
 
 エースのルート・ファン・ニステルローイは徐々に復調し、年明けから公式戦17試合17ゴールと爆発。さらに相棒となったポール・スコールズも攻撃性に磨きがかかり、14ゴールと結果を残した。
 
 こうして勢いを取り戻したユナイテッドは、12月28日のバーミンガム戦から15勝3分けという快進撃で、首位をひた走っていたアーセナルを猛追。そして4月12日、ニューカッスル戦で6-0と大勝して宿敵を首位から引きずり落とし、プレミア王座の奪還に成功した。
 
 絶望的な状況だったユナイテッドを3シーズンぶりのリーグ制覇に導いた、この堅守を軸としたスタイルは、後のファーガソン政権の第2次黄金期の基盤となっていくのだった。
 
 リーグタイトル奪回に沸くユナイテッド。しかし間もなくして、世界に衝撃を与えるニュースが発せられる。クラブのアイドル、デイビッド・ベッカムの退団だ。原因は、長らく苦楽を共にした指揮官との確執だった。
 
 2003年2月15日、FAカップの5回戦で、アーセナル(●0-2)に敗れた直後のロッカールームで、試合内容に激怒したファーガソンが蹴り上げたスパイクがベッカムの左まぶたを直撃し、両者が掴み合う騒動に発展した。
 
 この一件で、数針を縫う怪我を負わされたベッカムは憤慨。一方のファーガソンもショービズの世界にハマり有頂天となっていた教え子を良く思っておらず、親子のような師弟の関係は終焉を迎えたのである。
 
 ファーガソンは後に「デイビッドが公の場でスパイクによるダメージの深さを強調したことで、この件が広く世間に知れ渡ることとなった。そこで私は、役員会で『彼は出ていかねばならない』と言ったんだ」と振り返り、これが両者の関係が切れる決定的な出来事となったと告白している。
 

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