ミャンマー戦は“歪”の一言に尽きる。相手は「何点差で日本に負けるか」が勝負。選手の経験にはなったが…

2023年11月17日 清水英斗

残念な試合に

日本は上田のハットトリックなどで、ミャンマーに5-0で完勝した。(C)SOCCER DIGEST

[W杯アジア2次予選]日本5-0ミャンマー/11月16日/パナソニックスタジアム吹田

 11月16日に大阪のパナソニックスタジアム吹田で行なわれたワールドカップ・アジア2次予選の日本代表対ミャンマー代表は、5-0で日本が勝利した。

 リードを許したミャンマーが、前半から時間稼ぎに走る。2次予選ならではの「歪」な試合だった。ミャンマーは勝つため、引き分けに持ち込むために試合をしていない。「何点差で日本に負けるか」が彼らにとっては勝負だった。日本を含むアジア最上位国をわざわざ2次予選に組み込んでまで、こんな試合をやりたかったのか。残念だ。

 この2次予選は各組4チームのうち2位以上が、2026年ワールドカップ最終予選に駒を進め、同時に2027年アジアカップの出場権を得ることになっている。順位決定方式は、全試合の得失点差だ。つまり、ミャンマー、シリア、北朝鮮が2位争いで勝点が並んだ時、最終的に「日本に何点取られて負けたか」が出場権を分ける可能性がある。

 順位決定が当該チーム間の直接対決のみで争われる方式なら、ミャンマーは日本から勝点を奪うミラクルを起こそうと、ぶつかってきたかもしれない。だが、全試合の得失点差で、なおかつ日本のホームで戦うなら、当然の選択だ。これは規則の問題。彼らの姿勢の問題ではない。
【動画】ミャンマー戦後、上田夫婦の仲睦まじいやり取り!
 その戦略目標は、戦術にも落とし込まれる。ミャンマーの布陣は[5-4-1]だった。もともと守備的なシステムだが、状況によっては一層守備的に、[7-2-1]にも見える。

「状況によっては」を紐解くなら、要因はサイドの守備だった。ミャンマーは中盤の両サイドのMFが、毎熊晟矢や中山雄太に対し、マンツーマンでついて下がる。中盤4枚から両サイドの2枚が下がるので、[5-4-1]は[7-2-1]に変わる。単純なしくみだ。ミャンマーは日本のサイド攻撃を警戒し、薄く横に広げるような形を採っていた。

 となれば、隙は中央だ。MF2枚とFW1枚しか残っていないので、スペースはがらがら。といっても、前線から上田綺世らが下りてくると、7バックからマークを引き連れてしまうので意味がない。中央のスペースを使うべきは、日本の中盤以下の選手だ。

 11分に南野拓実の浮き球パスから上田がバックヘッド気味に決めたゴール、28分に田中碧のパスから鎌田大地が決めたミドルシュートの場面は、南野、田中、鎌田が起点になり、空けたスペースを使った場面だった。

 また、20分に打った町田浩樹のロングシュートも、このスペースを活用したもの。サイドからの力押しでも点を取れそうではあったが、今回は目先を変えた攻撃がゴールを生んだ。

次ページ崩す手順は大切。”いきなり”クサビを打ち込んでも捕まるだけ

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