三笘や鎌田らが不在、“1.5軍”でも難敵に快勝。最強時代の日本代表に求められる「招集を見送る決断」【小宮良之の日本サッカー兵法書】

2023年11月07日 小宮良之

欧州組だけで80人前後の有力な日本人選手がいる

多くの主力が欠場しても難敵カナダを4-1で下した日本代表。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 10月13日、新潟。日本代表はカナダ代表に4-1と快勝を収めている。一人ひとりの選手が局面で上回っていた。単純にボールのコントロール&キックで違いを見せた。

 カナダがペースを握る時間帯もあったが、彼らは思うように日本ゴール前へ迫れていない。コントロール&キックに自信がないのか、各駅停車の横パスが多く、必然的にプレスではめ込まれる。どうにか敵陣に入っても、崩す展開までは持ち込めなかった。左サイドでバイエルン・ミュンヘンのアルフォンソ・デイビスがボールを持つと可能性を感じさせたが...。

 一方の日本は代表歴の浅い選手が多く、プレスのタイミングやビルドアップのところでノッキングする時間帯もあった。しかし試合の中で修正する逞しさを見せた。例えば名門リバプール所属のMF遠藤航は質朴で老獪なディフェンスを使い分け、相手の攻守を分断、アドバンテージを奪い返していた。苦しくても凌いで流れを変えられるのは強者の証拠だ。

 久しぶりに代表復活した南野拓実も、実力を示した。こうした再起は、チーム全体にパワーを与える。自然と競争力が高まるのだ。

 日本は実力者たちの存在で、勝負を制していた。

 しかも、カナダ戦の先発メンバーは1.5軍に近かった。DF板倉滉、菅原由勢、MF守田英正、久保建英、FW上田綺世の5人はベンチスタート。また、鎌田大地、堂安律、三笘薫が「コンディション不良」で"辞退"と不在だった。チャンピオンズリーグ、ヨーロッパリーグを舞台に活躍している主力がいなくても、これだけの戦いができるのだ。

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 多くの選手は、欧州の最前線に飛び込むことで成長してきた。臨機応変に戦い方を変えられるタフさを身に付け、90分で勝負できるようになった。ワンプレーのうまさではなく、より実戦的になったと言える。

 今や欧州組だけで80人前後の有力な日本人選手がいる。MLSの吉田麻也、高丘陽平のようなケースもある。異国で助っ人になることが求められる環境で、選手としてだけでなく、人間としても鍛えられる。Jリーグのレベルが低いとかではなく、異国で重い責任を背負って戦う選手たちは顔つきからして違うものだ。

 それだけに、今後の代表活動は欧州組の招集に慎重になるべきだろう。興行的な親善試合、欧州や南米の強豪との親善試合、アジアの低いレベル相手の試合、アジアカップ、W杯アジア最終予選と分類。肉体は限りがある資源のようなもので、招集を見送る決断も必要になる。欧州組は欧州で日本サッカーを背負っているわけで、不要に消耗させてはならない。

 異国で進化を遂げた選手の"成功の果実"を無理なく収穫できるように、代表も変わっていくフェーズに入った。

文●小宮良之

【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。

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