「効率性と美しさを兼備した真のクラック」マドリーで躍動するベリンガム。アルゼンチンのレジェンドが“マラドーナ級”と絶賛する理由【現地発】

2023年10月28日 エル・パイス紙

ビッグゲーム向きのビッグプレイヤー

ナポリ戦で1ゴール・1アシストと躍動したベリンガム。(C)Getty Images

 庶民の心を捉えることができる選手がいる。ディエゴ(・マラドーナ)にミステリーは存在しなかった。天才ぶりから非業の最期まで、我々は彼のすべてを知っている。長所は賞賛され、短所は愛された。

 現役時代の功績は今から30年以上の出来事であり、間もなく死後3年が経過しようとしているにもかかわらず、ナポリの人々は宗教的な熱狂をもってディエゴを崇拝し続けている。話題に挙がるたびに祝福され、街を彩る壁画にその姿が描かれ、唯一無二のカリスマ性が商売に利用され、スタジアムで名前が連呼される。感動は長く記憶される。

 ディエゴのプレーを見た人々はいまだに信じられない思いのままだし、当時まだ生まれていなかった人々は何度も聞かされた話をそのまま吹聴する。ディエゴがナポリをチャンピオンに導いたとき、街の墓地に描かれたグラフィティにメッセージが躍っていた。

「君たちは自分が何を逃したか知らない」

【動画】ゴールまで一人で完結!ベリンガムがナポリ戦で決めた衝撃ドリブル弾
 そのディエゴの名前を冠したナポリのスタジアムで、マラドーナ級のパフォーマンスを見せたのが、ジュード・ベリンガムだ。舞台はチャンピオンズリーグ。とりわけ前半45分の内容は圧巻だった。

 ベリンガムはビッグゲーム向きのビッグプレイヤーだ。若さゆえの自信に満ち溢れ、身振り手振りの中にさえ圧倒的な支配力を垣間見せるその才能は見る者を魅了する。我々は戦術を超越した選手の躍動を目撃している。

 その知性は試合中に起こるありとあらゆる問題を自発的に解決させ、その強靭な肉体はピッチの広範囲をカバーすることを可能にし、その卓越した技術はボールを失う場面を見ることを難しくし、その自己犠牲精神はスペースを埋める守備面においても重要な存在に押し上げ、そしてフットボールに潜む秘密に触れることができる戦術眼はゴール前での驚異的なプレーを支える推進力になっている。

 ボールを持っているエリアや試合の局面に応じて、何を要求されているのかを知っていることがクラックの特権であるとすれば、ベリンガムはまさにそうだ。マドリーに効率性と美しさを兼ね備えた真のクラックが生まれた。

文●ホルヘ・バルダーノ
翻訳:下村正幸

【著者プロフィール】
ホルヘ・バルダーノ/1955年10月4日、アルゼンチンのロス・パレハス生まれ。現役時代はストライカーとして活躍し、73年にニューウェルズでプロデビューを飾ると、75年にアラベスへ移籍。79~84年までプレーしたサラゴサでの活躍が認められ、84年にはレアル・マドリーへ入団。87年に現役を引退するまでプレーし、ラ・リーガ制覇とUEFAカップ優勝を2度ずつ成し遂げた。75年にデビューを飾ったアルゼンチン代表では、2度のW杯(82年と86年)に出場し、86年のメキシコ大会では優勝に貢献。現役引退後は、テネリフェ、マドリー、バレンシアの監督を歴任。その後はマドリーのSDや副会長を務めた。現在は、『エル・パイス』紙でコラムを執筆しているほか、解説者としても人気を博している。

※『サッカーダイジェストWEB』では日本独占契約に基づいて『エル・パイス』紙に掲載されたバルダーノ氏のコラムを翻訳配信しています。

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