「監督には言われてなかったです」日本vsチュニジア戦の終盤、なぜ菅原由勢は“逃げ切り右ウイング”への緊急起用に対応できたのか【現地発】

2023年10月22日 中田徹

鋭角の折り返しで今季4つ目のアシストをマーク

AZでの貴重な積み重ねを代表戦でも体現している菅原。まさに右サイドのスペシャリストだ。(C)Getty Images

 10月21日に行なわれたオランダ・エールディビジ、AZ対ヘーレンフェーンはホームチームが3-0で快勝した。第9節を終えて今シーズン負けなしのAZは首位PSVに勝点2差の2位という好位置につけている。

 17日のチュニジア戦でフル出場を果たし、こちらの18日深夜にオランダ・スキポール空港に着いたばかりの日本代表右SB菅原由勢は、時差・移動の疲れが残って万全な体調ではなかったものの、「その日出せる100%を試合で出す」(菅原)という意気込みでプレーしたのが功を奏し、攻守にハイパフォーマンスを披露した。

 菅原にとってこの試合最初の見せ場は1-0とリードした15分、ヘーレンフェーンの得たCKからCFファン・アメルスフォールが撃ったシュートをゴールライン手前で執念のヘッドでクリアーしたシーン。76分にはチームメイトがトライアングルのパスで右サイドを崩す間に菅原が右ポケットに走り込み、鋭角の折返しでCFパブリディスのゴールをお膳立てした。チームの3点目、本人にとっては今シーズン4個目となるアシストを記録した菅原は、セーフティーリードということもあって80分にベンチへ退いた。

「落ち着いて中を見ることができました。パブリディス選手がいいところにランニングしてくれたので、あとはもうそこに通すだけでした。よく決めてくれましたね。今シーズンは本当に彼には助けられているので、彼の勢いを僕たちも支えてあげないといけない。ノってる選手にボールを出し続けることは大事なので、すごくいい信頼関係ができています」
 
 ギリシャ代表のパブリディスは今シーズン開幕戦から9試合連続の13ゴールを決め、フェイエノールトのエースストライカー、サンティアゴ・ヒメネス(メキシコ代表)とともに得点王争いのトップに立っている。ふたりがこの快ペースを維持できれば、1956-57シーズンにクーン・ディレン(PSV)が記録したシーズン43ゴールを抜く計算になる。

 真のゴールゲッター、ヒメネスと違って、パブリディスは10番のポジションに降りて中盤でクリエーティブなプレーをしたり、最終ライン手前まで戻って守備に奮闘したりと、かなりオールラウンドな能力を持っている。だからこそ菅原は「彼の勢いを支えたい」とアシストで援護射撃するのだ。

「彼がチームの先頭に立って、攻撃も守備も全部やってくれているので感謝しかありません。彼は、今シーズンの僕たちが築くサッカーの大きな中心です。本当に彼には頭が上がりません」

 さらに菅原は今シーズン売出し中のドリブラー、サフラウイ(ノルウェー代表)に仕事をまったくさせず、クリーンシートにも大貢献。「ボランチの選手と協力しながら彼の良さを活かさないことを意識しながらやれました.それなりに良かったと思いますね」と、敵の左ウイング封じに手応えを感じていた。

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