チュニジア戦の先制シーンは理想的なビルドアップ。相手の守備的システムに対する崩し方の数を、もう少し増やしたい

2023年10月18日 清水英斗

チュニジア戦は苦戦した印象も

古橋の先制ゴールに至るまでの過程が見事だった。写真:梅月智史(サッカーダイジェスト写真部)

[国際親善試合]日本 2-0 チュニジア/10月17日/ノエビアスタジアム神戸

 日本代表は10月17日、神戸で行なわれた国際親善試合でチュニジア代表と対戦し、2-0で勝利を収めた。

 これで6月からの親善試合はエルサルバドル、ペルー、ドイツ、トルコ、カナダ、チュニジアに6連勝。北中米、南米、欧州、アフリカと様々な特徴を持つチームを尽く打ち破り、日本の地に足をつけた成長を内外に示した。

 とはいえ、今回のチュニジア戦は過去の5連勝と同じ4得点以上のゴールラッシュとはいかず、苦戦した印象もある。守備的な5-4-1のシステムでスペースを消し、球際にも粘り強く対応してきたチュニジアから点を奪うのは容易ではなかった。

 おそらく、同様の戦い方を選択する対戦チームは、来月から始まる北中米ワールドカップ・アジア2次予選、その後の最終予選を含めて相対することが増えるはず。良いタイミングのテストマッチだった。

 スペースを消された5-4-1をいかに攻略するか。その糸口は、中盤のフィルターである4枚のMFを剥がすこと。
 
 相手の前線は1枚なので、日本の最終ラインは比較的余裕を持ってボールを動かせる。この数的優位を生かして1トップの周囲のスペースへ侵入し、4枚のMFを前へ釣り出す。するとDFとのライン間が空くので、そこで前を向いてボールを受ければ、今度は5バックを釣り出すことができ、最後はスルーパスやワンツーなどで背後をねらう。つまり、1列ずつ攻略するのが常道だ。

 1トップの周囲でどのスペースが突破口になるかは、相手の守備連係によって変わる。過去の森保ジャパンで何度か見られたのは、相手1トップの裏でアンカー気味に残した遠藤航がボールを受け、相手の中盤を釣り出すビルドアップ手法だ。

 しかし、チュニジアの場合はイッサム・ジェバリが日本のCBを深追いせず、ボランチに注意を払っていたので、1トップ裏のスペースはあまり空かず。そこを無理に使おうとして、日本がボールを奪われる場面もいくつかあった。

 一方、代わりにチュニジアは両サイドハーフが前へ出て、日本のCBやSBに寄せるプレスを行なっていたので、突破口はここだった。1トップの両脇、サイドと中央の間に位置するハーフスペース。この要所を最もうまく攻略したのが、43分の先制シーンだった。
【PHOTO】日本代表のチュニジア戦出場17選手&監督の採点・寸評。2人に"7点"の高評価。MOMは2点に絡んだMF

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